3文字限定話2(31〜)

ツイッターで「○○は「漢字1」「漢字2」「漢字3」の3文字を使って文章を書きましょう」という診断メーカーがあるのをご存知でしょうか。
某様と一緒にスカイプで話している時、よくこれを使ってお題を貰って小話を書いているのですが、溜まりに溜まったので、纏めてアップすることにしました。
甘凌はいつも書いているので(個人的にこれで甘凌をよく書いているため。)あえてそこは外し、凌統中心に孫呉のキャラや、西涼の二人、諸葛亮が多めです。
色々書いていますがいつもざっと書いているので、内容は似たり寄ったりかもです(特に策凌)。また、長さも長短まちまち。イラストを描かれる方の落書きのようなものだと思ってください。
暇つぶしにでも読んで下さればと思います。
尚、時々話を書くのに夢中になって、ちゃんとお題に応えていない場合もあります;
※印のあるものは性描写ありです。



▼クリックでお題に飛べます。
31凌操と凌統32凌統と凌操33黄凌(※)34権凌35堅凌36超凌37岱凌38陸凌39権凌40策凌(※)41瑜凌42蓋凌43堅凌44岱凌45諸葛凌46凌操47馬超と馬岱48陸遜と甘寧49馬岱と曹操50策凌51孫権と甘寧52馬超と諸葛亮53馬岱と斥候54孫策と孫権55陸凌(※)56瑜凌(※)57番外編・惇遼58馬超と馬岱59子亮と子凌60趙雲と馬岱61子凌と凌操 




31凌操と凌統は「香」と「起」と「柔」を全部使って文章を作りましょう。

真夜中に、ふいに凌統は起きてしまった。
こういうことは小さい頃から時々あり、決まって自分だけ夜に取り残されたような気分になって、泣きたくなるのだ。
そして、隣に眠る父に縋りつくように、父の着物の裾をぎゅっと握る。
するとどんなに熟睡していても、父は凌統の背に手を回して、あやす様に数回優しく叩いてくれる。
大丈夫、お前はちゃんと朝を迎える、と言っているように。
そうされていると、不思議と安心できて、いつの間にか眠っていて朝になっているのだ。
だが、今起きてみたら隣に父がいなかった。
「ちち・・・うえ?」
呼んでみても返事はない。
ああ、そうか。
父は死んだのだった。
凌統は、己の体にかけていた毛布をかき集めて、顔を埋めて泣いた。
毛布は柔らかいばかりで、再び眠れそうになかった。

(父上、統は、朝を迎えることができるでしょうか。)



32凌統と凌操は「食」と「冷」と「泣」を全部使って文章を作りましょう。

「父上・・・本当に家はこっちでいいんですか?」
「いいと思うんだけど・・・あっれ〜?道間違えたかぁ?」
父と一緒に山に猟に出かけた凌統である。
収穫は大量、うさぎ3頭に山鳥数羽。それから行きかけにみつけた木の実も採れるだけ採って、しばらくは食材に困らないだろうと、2人でホクホクしながら駆けた帰り道。
一向に、見知った村につかない。
むしろ、道はどんどん険しくなり、長江がどちらにあるのかすら分からなくなってきた。
凌統はとても不安に思っているが、父は重く考えていないようで、辺りを見回しながら躊躇うことなく道をずんずんと突き進む。
「父上、ねえ、道を戻ってみませんか?」
「つっても、どっか分かれ道とかあったか?」
「・・・見ませんでしたけど。」
「んじゃあ、きっとこっちでいいだろうぜ!」
という父は、むしろこの状況を楽しんでいるようで、凌統はほんの一瞬だけ冷やかな目線を父に向けた。
だが、まだ凌統は幼かった。長い時間歩き、賊に遭遇したらどうしようとか不安ばかりが膨らみ、日も西に傾いて空は朱色。このまま家に戻れなくなったらどうしようと泣きそうになりながら父の背を必死に追った。
「ん?統。どうした。足痛いか?」
「ぃ、痛くないです!早く帰らないと。みんなが心配してます!」
「足見せてみろ。おい、足、マメが潰れてんぞ。」
「大丈夫です!これくらい。統はまだ歩けます!」
すると、父は困った笑顔を浮かべて、ため息をついた。
「統。お前はちょっと頑張りすぎるところがあるなぁ。」
「頑張ってません!」
「わかったわかった。・・・よし。小さいけど川もあるし、今日はちょっとここで野宿しようぜ。」
「ええ!?」
「大丈夫だ、俺がいるからよ。親子二人、たまにはこんなのもいいだろ!」
と、笑った父の顔は頼もしくて、凌統は嫌々ながら、頷いてしまった。



33黄凌は「欲」と「人」と「帯」を全部使って文章を作りましょう。

黄蓋は帯を解く音を聞いた。
久しぶりにやってきた姑楼は、若い頃はよく遊んだ場所であるが、年数もかなり経った今、すっかり顔なじみの女たちはいなくなっていた。
だが、今日は女を買いに来たのではない。
ここいらに潜んでいると噂の立っている斥候を斬るために来たのだ。
窓を覆う布の裏に潜みながら、中の様子を窺う。
(しかしあいつは上手くやりおるのう。)
寝台の上で客の男に酒を注ぐ人物は、女ではなかった。
黄蓋が連れてきた凌統だ。
便利だろうからと無理矢理連れてきたが、本当に便利だった。
見事に女の衣を纏い(大きさは若干無理があるようだが)、化粧をして、見事に艶やかな姿に化けた。だが、黄蓋に向かって小さく頷いて見せたので、この客が斥候であるようだ。
男が凌統に欲が疼いたのか、凌統の腰に手を回して帯を解いた。
(これが終わったら、ここで奴と一勝負とでもいくか。)
そっと懐の暗器に手をやり、黄蓋は大きく布をまくりあげた。



34権凌は「決」と「暇」と「入」を全部使って文章を作りましょう。

孫権は凌統のいる幕舎に入った。
大きな背を縮こまらせて、父の亡骸のすぐ傍で泣いているその姿は、まるで子供のようである。
「凌統・・・。」
亡くした者の痛みは、分かるつもりだ。短い期間で父と兄を亡くしたのだから。
凌統は何も言わず、ただただ泣いていた。
「凌統・・・。」
そっと近づいて、凌統の後頭部を撫でながら、孫権は凌操の亡骸を見た。
切り刻まれた姿は魂が無くなったといっても痛々しく、思わず顔をしかめた。
こんな風に臣が殺されるのは黙ってはおれない。黄祖は仇でもある。
早く、決断しなければ。
自分は泣いている暇など、ない。



35堅凌は「絶」と「楽」と「溶」を全部使って文章を作りましょう。

これはまた可愛らしいものだ。と孫堅は思った。
新しい家臣に息子を男にしてほしいと頼まれ、承諾したはいいが、若干垂れた目はこっくりとした印象を受け、体も細く、女子のようであった。
名を尋ねれば、見た目にそぐわぬ元気な声で“凌公績です”と答えた。
権の友人には向いているかもしれない。
凌統は、部屋に入った途端、床に敷いてあった虎の毛皮に絶句し、茶に砂糖を溶かした飲み物にも感激してくつろいでいた。
さて、男にしてやるか・・・。
孫堅は瞳に虎の刃を忍ばせて、己の上着を脱ぎながら凌統を呼んだ。
「凌統、こちらにおいで。」



36超凌は「男」と「穴」と「想」を全部使って文章を作りましょう。

孫呉は同盟を結んでいるとはいえ、何を考えているのかいまいち掴みにくいところがあった。
虎穴に入らずんば虎児を得ず。本日馬超は、諸葛亮の護衛として孫呉にやってきた。

今日は馬岱はおらず、本当に諸葛亮と自分だけで、若干心細い。さらには南方の気候は寒冷地育ちの馬超にとっては暑いぐらいで、鎧の中には滝のような汗が流れていた。
諸葛亮は、部屋で孫呉の軍師達と何やら話をしている。
(暑いな・・・)
顎を伝う汗をぬぐうのはこれで何度目か。
部屋から洩れてくる言葉がぼんやりと聞こえはじめて、頭がぐるぐると回っているような感覚。
「おい、あんた、大丈夫か?」
ふいに腕を掴まれて、引っ張られると簡単にそちらのほうに体が傾き、腕を掴んだ人間もろとも、馬超は石の床に倒れ込んでしまった。
瞳に映ったのは、どこか焦っている男で、自分の下敷きになってしまっている。
すまないと言おうとしたが、男の体温が低く、腕にあたる石床も冷たくて、暫く何もしたくなくてそのままでいた。
「まさか、・・・暑さにあてられたか?」
額に冷たい掌が押しあてられる。ああ、気持ちいい。馬超は細く息を吐いて、その手をゆるゆると掴むと自分の頬に押し当てた。
男は驚いた顔をしたが、何も言わずにされるがままでいた。
「おい、あんた、馬超だな?」
「・・・・・・そうだ。」
「もっと冷えたとこあるから、そっち行こうや。水もあるし、まず鎧を脱いだほうがいい。諸葛さんは大丈夫だからさ、な?」
「・・・。」
馬超は頷いた。

岱よ、見知らぬ土地で、このようなことをされると本当に心に染み入るな。
いつ敵になるやもしれぬ相手だが、ひと時でもこの男を思うことは罪にはならぬ・・・よな。



37岱凌は「香」と「液」と「肉」を全部使って文章を作りましょう。

大学で、いつも同じ講義で会う男がいた。
その講義は、受けている学生の人数が一ケタしかいないものだから、学生同士仲良くなり、その男とも話をし始めた。
名は馬岱といって、学年は凌統よりも2つ下であった。
それで、今日の講義の終わりに夕飯に誘われたのだ。
“ねえ、今日の夜時間ある?俺の家に来ない?ご飯一緒に食べようよぉ、俺、作るの得意なのよぉ。味には自信あるから任せてちょーだい!”
いつもの陽気な口調に、つい首を縦に振って来てみたはいいが。
それはそれは本格的であった。
既にアパートのに来た時点でいい香りが漂い、いざ部屋に入ると既に晩飯がセッティングされてあった。
「いらっしゃーい!待ってたよお、さあ、一緒に食べようよ!」
にこにこと笑いながらいう男の前に凌統は座り、早速目の前に広がる食事に手をつけた。
味はどれも最高、すぐにぺろりとたいらげたあと、馬岱は何かの瓶取りだした。
「ねえ、これ、何だと思う?」
瓶の中には透明な液体。 「媚薬っていうの。今度は俺が、君を食べる番だからね?」
そこで凌統はやっと、自分が狙われていたことに気付いたのだ。



38陸凌は「飲」と「射」と「酒」を全部使って文章を作りましょう。

「え、どうなってんですか、これ。」
凌統の頭の上には酒瓶が乗っかっている。
背中には硬い壁。逃げ場はない。
視線の先には、自分よりも幼い軍師が、火矢をつがえてこちらに鏃を向けているのだ。
どうしてこうなった。
ああ、宴をしていたのだ。
そしてどういうわけか、陸遜が告白してきて、どういうわけか、陸遜が酒瓶を射かけたら付き合うことになるとかなんとか。
こんなことしなくても頷くのに、酔った陸遜は聞く耳を持たない。
「これは自分の心に決着をつけるためでもあるのです、凌統殿も覚悟してください!」
「いや、それは分かるんですけど、炎は無くてもいいんじゃないですかねえ!」
凌統の悲鳴が建業に木霊するのは、その数秒後のことである。



39権凌は「射」と「生」と「濡」を全部使って文章を作りましょう。

孫呉の宴はいつも楽しい。
時が来たと同時にそこかしこでどんちゃん騒ぎが始まる。
その中で、凌統は一人静かに杯を傾けていた。だが、心は穏やかではない。時折、どこからか射るような視線を感じるのだ。
「おい、りょうとう!」
出来上がっている孫権が絡んできた。
「と、殿、またちょっと飲みすぎなんじゃないですか?」
「いいのだ!よし、ではちょっと外に出るか!」
「おっと!」
べろべろの孫権が突然立ち上がったので、凌統は寄り添うようにして肩を担いだ。
室から出、回廊に出た時だ。孫権の足がもつれてそのまま倒れた先には・・・
池。
気が付いたら盛大な水飛沫の中心にいて、見事に頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れ。
凌統は少し呆れたけれど、君主に対して何か言うこともできなかった。
孫権は笑っていた。
「いいな、生きているという感じがするな、もっと楽しもう。」
「孫権様・・・もうちょっと控えたほうが・・・」
途端、孫権がずいと顔を近づけてきた。
「凌統、宴が終わったら私の部屋に来い。よいな。」
碧い瞳は夜の色を帯びていた。



40策凌は「入」と「晩」と「色」を全部使って文章を作りましょう。

孫策との鍛錬は久しぶりで、大分時間をかけて手合わせをした。
小覇王の一撃一つ一つは大層重く、晩となった今でも手足に痺れのようなものが残っている。
「おい、何考えてんだよ。」
「、う・・・。」
手合わせの後は決まって色事に耽る。武が満たされるのと比例して、行為もまた激しいような気がした。
肉を分け入ってくる熱さにのけ反りながら、凌統は頭の中を空にするように努めることにした。



41瑜凌は「暇」と「絶」と「決」を全部使って文章を作りましょう。

軍備や兵の位置を何度も確認し、周瑜は一旦自分の幕舎に戻った。
寝台に、人の影。
「待ったか。」
「ちょっと暇でしたかね。」
「すまない。」
凌統の傍らに座り、そっと茶色の頭をよせて額に唇を押しあてた。
彼の黒子が視界の端に映って、周瑜はそっと笑った。
絶妙な位置にあるそれは、岩山にある一輪の牡丹のように、目元で咲き誇っている。
「君は美しいな。」
己の言葉に理性が決壊しそうになったのを何とか抑え、周瑜は戦前の高揚を、この男を愛でることに変えて昇華しようと思った。



42蓋凌は「抱」と「食」と「罪」を全部使って文章を作りましょう。

一歩一歩ゆっくりと踏みしめながら黄蓋は場内を歩いていた。
少し歩いて、よいしょと背中に抱えた男を抱え直す。
「まったく、食わずに飲むからすぐに潰れるんじゃ。幼いのう。」
先ほどまで孫権主催の宴に皆で参加していたのだが、強制的に飲み比べに参加させられていた凌統は早々に潰れ、お開きとなった時間になっても誰も起こそうとせず、一人ごろりと広間に寝ていたのが少し可哀相になって、連れて帰っている。
しかしまあ、昔見たあのちびが、今や体躯だけは立派になったものだ。
とても、美味そうだ。
「・・・お主も罪つくりよのう。」
背中でスヤスヤと気持よさそうに眠っている凌統が、明日の朝に裸で起きたらどんな反応をするだろうか。
少し楽しみに思いながら、黄蓋は自分の邸に足を進めた。



43堅統は「頭」と「穴」と「触」を全部使って文章を作りましょう。

突然孫堅の部屋に、凌統が転がり込んできたのは、激しい雨の降る夕暮れであった。
泣きながらやってきた小さい子供は全身ずぶ濡れで、すぐに火を持って来させ、白湯を与えてやった。
「一体どうしたというのだ。」
「ち、父上っ・・・喧嘩っ、しっ・・・あああん・・・」
「よしよし、泣くな。ほら、服を脱ぎなさい。そのままでは冷えてしまう。」
強制的に脱がせた体はとても冷えていて、毛布でくるんで、孫堅はそのまま凌統を自分の膝の上に乗せた。
頭も濡れているから、長い髪を布で拭いてやっていると、凌統は泣き疲れてか、すやすやと眠ってしまった。
凌統に体温が戻るように、しばらくそのまま抱きしめてやっていた。雨はまだ止まない。
するとそこへ、申し訳なさそうに凌操がやってきた。
「あっ、統!殿・・・すみません、うちの統が・・・。」
「いや、いいのだ。しかし凌統が風邪をひいてはならんな。権の服を持ってこさせるから、それまでここに居ろ。・・・一体どうしたというのだ。」
「それが、阿統が、釣りの穴場を見つけたっていうんで、行ってみたら・・・俺もよく知っているところで。“ここなら知ってる”って言ったら、泣きながら怒りだしちまったんですよ。」
「はっはっは。そうか。子どもの心を汲むのも中々大変だな。」
「ですねぇ。」
ふと外を見ると、やっと雨が弱まったような気がして、孫堅はそっと笑みを浮かべた。



44岱凌は「黒」と「溶」と「抱」を全部使って文章を作りましょう。

意識が戻ると同時に、凌統は大量に飲んでいた水を吐き出した。
「よかったあ、意識が戻ったね!」
抱きかかえられている体勢のまま、見上げると黒髪でくりくりとした黒目がちな瞳が、こちらを覗きこんでいた。
「君、川辺にいたんだよぉ。流されてきたの?」
はい、これ、薬湯だよと差し出されたものを少し口に含む。
薬草が溶けたそれはとても苦かったが、温かいので冷えた体にはとても染み入って生き返る思いがした。
孫呉の船が、嵐で座礁したのだ。
「ここは・・・どこだ?」
「蜀だよ。君・・・孫呉の人?」
男の瞳が僅かに妖しく光った。さあ、何と答えるべきか。凌統は気を失うふりをしてやりすごすことにした。



45諸葛凌は「穴」と「純」と「難」を全部使って文章を作りましょう。

「貴方の御父君は、甘寧殿に討たれたとか。」
前を歩く諸葛亮が、口を開いて言った内容がもっと孫呉に関するものならば、凌統も美味く返せたのかもしれない。
諸葛亮は未だ前を向いているから、その裏に何が隠れているのか探るのは聊か難儀であった。
「どういう意味です?」
純粋に問う。そうとしか返しようがない。だが、動揺はできるだけ悟られぬよう。
「いえ。ただ、貴方と甘寧殿が、穴倉で仲睦じく絡み合っていたと、聞いたものですから。」
やっと、蜀の軍師がこちらを振り向いた。
口元は穏やかに笑っていたが、瞳は何かを狙っていた。
孫呉を切り崩す糸口を。
ああ、自分はこの男の神算に嵌まってしまったのかもしれない。凌統はそう思いながらも、どうにかして逃げ道を探ろうと唾を飲み込んだ。



46凌燥は「部」と「抱」と「微」を全部使って文章を作りましょう。

夜、凌操は息子の部屋へそっと入った。寝台には泣き疲れた息子が、ときどきしゃっくりをあげて眠っている。その体勢といったら万歳であるから、凌操は微かに笑った。
先ほどまでもうひと勝負と食い下がってきたその掌は、既に武器を持つ手に変わってきていて、ところどころにマメやあかぎれができている。
早く息子と戦場をともにしたいような、そうでないような。凌操は複雑な気持ちになりながら、息子の横に身体を横たえ、未だ小さな身体を優しく抱いた。



47馬超と馬岱は「抜」と「抱」と「帯」を全部使って文章を作りましょう。

馬超は膝を抱える癖がある。本当にごく希な時ではあるのだが、そういう時は決まって血みどろの戦に身を投じた後であった。
ふと、目の前を馬岱の帯が横切ったので手を伸ばして引っ張った。
するとそれまで馬超の存在をまるで気にしていなかった馬岱が、初めて馬超の前にしゃがみこんで、言うのだ。
ねえ、若。若はいつも抜群に戦が上手い。
後ろをついて行くのがやっとで、怖くなっちゃうくらいだよ。
でも、そうして膝を抱えていて嬉しいよ。
若でも怖いものがあるんだからさ。

・・・怖いのは自分自身。憎むべきは自分自身。曹操、ではないのかもしれない。



48、陸遜と甘寧は「変」と「恋」と「破」を全部使って文章を作りましょう。

城の中を歩いていた時、陸遜は庭の一角でこちらに背中を向けて座り込んでいた甘寧を見つけた。
その背中は心なしか珍しく暗い。
「どうしました?甘寧殿。」
面倒だが、いつまでもこんな所で地縛霊のように座りこまれていては、堪ったものではない。
陸遜は、声をかけて背中越しに覗きこんでみると、甘寧はひとつの書簡を抱えていた。
いや、正確には書簡らしきものである。なんせ、それは酷く形が崩れていて書簡と呼べない只の木の屑のようであったからだ。ただ、その木の屑には、申し訳程度に文字が並べられていた。
ゆっくりと甘寧が振り返る。
見事に落ち込んでいた。

「陸遜。」
「どうしたんですか。邪魔ですよ。甘寧殿。」
「この野郎…言ってくれるじゃねえか。」
「ですから一応理由を聞いてやってるんじゃないですか。」
「何となく誰あてでもない書簡を書いたら、凌統宛てになったから、あいつに見せてくれてやろうとしたらこのざまだ。」

その辺に落ちていた木片を拾い上げてみたら、成程。“お前が変しい”と。
気持ちの悪い字の間違いと、ただの恋文の内容であるそれとの二つの意味で、陸遜は思わず顔を顰めた。
しかし凌統殿のことだ、それだけじゃあここまで書簡を大破させないだろう。

「こんな、物を残そうとするから悪いのですよ。貴方らしくないじゃないですか。」
「そうだけどよ。たまにはって。」
「その“たまには”は無用なのですよ。ご自分の口で伝えれば、それでいいんじゃないですか?」

きっと凌統殿だってそれで満足するに違いない。
すると、甘寧は暫く口の中で何かを呟きながら、木片を手の中に抱いて、去って行った。

「全く・・・。どうして私がこんなことをしなくてはいけないのですか。」

本当に。面倒な二人だ。



49、馬岱と曹操は「穴」と「想」と「優」を全部使って文章を作りましょう。

曹操は突然突き出された獲物をほんの一寸の差で避けた。
獲物は巨大な筆であり、全く人を殺めるようにも見えなかったのだが、纏っている気が刀や槍のそれと全く同じで、思わず筆を操る者を見て片方の頬を釣り上げた。

「虎穴に入ったよお。」

一見優男のようだが、念に燃え上がった瞳。
けれど、その姿はふと蝋燭の火を吹き消すが如くに消えた。
気付けば体は汗にまみれていて、額を落ちてきたそれを拭った。
寝室まで、刺客がやってくるはずはなかったのだ。
部屋の前には許チョが立っているし、呼べばやってくる所に夏候惇もいる。
己に恨みを持つ者は多くあれど、体を離れてまで一糸報いようとは、よほどの・・・。

「・・・。」

最近馬超が死んだと聞いた。

「・・・想いを引き継いだ者が現れたか。」

曹操は、寝台から見える夜空を睨んだ。



50、策×凌は「惑」と「顔」と「隠」を全部使って文章を作りましょう。

蜜事に臨む時、孫策に対する感情は畏怖であった。
欲されるがままに体を開いて、喘ぎ、その力の強さに惑わされることはあっても、自ら孫策に向かって手を伸ばすことはできなかった。
女と同じだ。きっと、孫策は他にも自分のような者を何人も託(かこ)っているのだろう。
しかし、孫策は大喬を娶っても、己の所へ通うことを止めなかったものだから、少し不思議に思っていたのだ。

明日遠征に出るという孫策が、凌統の所へやってきた。
大体大きな戦の前には、ここにやってくるから、凌統は少しばかり予想はしていた。
しかし、表向きはいつもと同じだが、どこかおかしい。
衣を一枚一枚剥いでいく指はややもつれ、僅かに震える吐息も、己の欲を押し殺しているが故のそれではなく、もっと何か巨大な者を感じ取っているようだった。
凌統は、話しかけてみた。

「孫策様、次の次の戦で、俺も初陣に出ます。」
「・・・そうか。」
「そうしたら、俺も立派に働けます。」
「・・・そうだな。」

連れない返答。
いつの間にか凌統は孫策の身長を追い越していたが、その背中がどこか小さく見えたのは、それだけではないようだ。
突然、孫策が凌統の体をきつく抱きしめた。今までこんなことをするのは初めてに等しく、凌統は酷く驚いて、思わず肩をすくめてしまった。

「そ、孫策様!?」
「・・・すまねぇ。凌統。ちょっと、このまま、な。」
「どこか、具合が悪いんです?」
「・・・わからねぇ。わからねぇけどよ。なんか・・・怖いんだ。」

猛虎の心に触れたような気がした。
ああ、この人も“人”なのだ。
あんなに猛々しい力を振るうけれども。
孫策の顔は、俯いているので隠れて見えない。
そこで初めて、凌統は孫策の背中に腕を回した。
厚いが小さくて、沢山の傷がついていた。

「・・・もうすぐ、俺ももっと力になれますよ。」

何と声をかけたらよいのか分からず、とりとめのない言葉を呟いてみたが、孫策からの返事はなかった。
久しぶりの、静かな夜である。



51、孫権と甘寧は「感」と「腹」と「入」を全部使って文章を作りましょう。

宴の席、孫権はいつもの如く酔っていた。
酒は辛いことを忘れさせてくれるだけでなく、皆の楽しそうな顔を一堂に見ることができてとても好きだ。
碧い瞳を綻ばせながら、練師に最早何杯目か分からないが酒を注がせて悦に入っていた所に、甘寧が酒を持って乱入してきた。
珍しく顔を真っ赤にさせて、かなり酔っている。

「殿ォォォォォ!俺と飲み比べをしてくだせぇ!」
「お、私とか?私はまだまだいけるが、容赦せんぞ?」
「俺だってまだまだいけまさぁ!でも!俺が勝ったら、俺の願いをなぁんでも聞いてくれませんかねぇ?」
「わかった。甘寧、お前が勝った暁にはお前の願いを聞き入れよう。」

甘寧の腹の内は容易に分かった。
きっと勝ったら、凌統を俺にくれとでも言うのだろう。後ろのほうに見える凌統が怒り顔でこちらを見ている。
怒っているのは建前で、本当は甘寧を心配しているのだろう。

(まったく。しかし、凌統がああやって感情を出すのだから、それもまた良しとするか。)


数刻後、ほぼ同時に酔い潰れた孫権と甘寧は、それぞれ練師と凌統に運ばれて消えたという。



52、馬超と諸葛亮は「純」と「棒」と「口」を全部使って文章を作りましょう。

突然現れたその姿は、常々と同じ口元を羽扇で隠した姿だったというのに、九泉から魂を連れてゆく使者が現れたと、馬超は錯覚を起こしてつい身構えてしまった。

病を得てまだ日が浅い。このことは、誰にも告げてはいない。
馬岱にも。だが言っていないだけで、薄々勘付いているかもしれない。
そんな時に、真夜中に突然やってきた諸葛亮だ。
はっきり言って、個人的にあまり話したことはない。
掴みどころがなく、恐怖すら覚える。

「何をしに来た、軍師殿。」
「貴方と、話をしようと思いましてね。」
「そうか。俺は口下手だからな。話をしてもつまらぬぞ。」
「わかっています。私の話に耳を傾けてくだされば、それでよいのです。」

馬超は眉をひそめた。
少し夜の風が肺を冷やして、軽く咳き込む。
だが、諸葛亮の前で膝を折りたくはなかったので、近くの棒きれを手に取り、槍の構えを取った。

「馬岱殿の話ですが・・・。」
「・・・。」
「しばらく、私の元で働いてもらおうと思うのです。」
「俺はいいが・・・馬岱はどう言うかだな。」
「馬岱殿は、“貴方がいいならそれでいい”といいましょう。」
「・・・。」

棒を突き、薙ぎ払い、回転する。
また、風が吹いた。肺が痛い。
咳が止まらない。

「よろしいですか?」
「・・・軍師殿ならば、馬岱を上手く扱えるだろう。馬岱もそれに応えるだろうな。」
「ええ。」

とうとう馬超は咳き込んで、口を押さえてその場に膝を追ってしまった。

「西涼の風は・・・痛いくらいに純粋ですね。」
「・・・。」

ああ、きっと。
諸葛亮は知っているのだ。
己の体が病に蝕まれていることを。病によって死ぬことを。
そして死んだのち、馬岱が残されることを。

「頼んだ。」

馬超は、己に向かって深い礼をした諸葛亮を振り返ることなく、手の中の黒い血の塊を握りしめ、邸の中へ消えていった。



53、馬岱と斥候は「酒」と「恥」と「口」を全部使って文章を作りましょう。

これは誰にも言っちゃいけないよ?君と俺だけの秘密だ。いいかい?
俺ね、さっき一人の杯に毒を盛ったんだよぉ。
その人が斥候だって分かっちゃったからさぁ。
あれ、君、どうしてそんなに頭ぐらぐらしてんの?しっかりしなよ。
え?あの酒に口つけちゃったの?

・・・そんなに驚かないでよ。
大丈夫。すぐに楽にしてやるよ。
そのあとで、お前は一族の恥さらしになるわけだ。懺悔は聞こえないよ。



54、孫策と孫権は「背」と「聖」と「眠」を全部使って文章を作りましょう。

兄上!と、孫権は兄の裾を力いっぱい引いた。
孫策は振り返りながら、もう片方の手を繋いでいた凌統に、先に部屋に行っていろと告げた。
が、孫権はそれを制してしまって凌統は困った顔をしてその場に立ち尽くしてしまった。
孫策は、後頭部を掻きながら孫権のほうを向く。

「おい、権。どうしてそんなについてくるんだぁ?」
「兄上、駄目です!今日私は凌統と一緒に眠る約束をしたのです!」
「はぁ?この次でもいいじゃねえか。」
「次などない・・・次などないのです!」

その時初めて、いつの間にか兄の背を越してしまっていることに気がついて、兄上のほうこそ次があるじゃないかと考えた自分の思考を孫権はすぐにかき消した。
ここで兄を止めなければ、凌統はいつまでも兄に繋がれたままなのだ。
早く兄から凌統を剥がして、自分の部屋へ連れて行きたかった。
そこは聖櫃のようだと思う。大切な何かをしまうための箱・・・。
大切なものを、守るための箱なのだ。

「仕方ねぇな。」

そう言って、孫策は凌統に“権のところへ行け”と言った。
凌統の表情は、孫権の所からはよく見えなかったが、その背は安堵したように見えた。



55、陸凌は「絶」と「無」と「男」を全部使って文章を作りましょう。

「凌統殿」
呟きながら自身を慰めていた所に現れたのは、その名を持つ本人だった。
言霊が呼びよせたか。
彼の人は、少し目を見開いて、少しだけ顔を歪ませて足早に去って行った。

遠ざかる背中に腕を伸ばしても、距離は延びるばかり。

どうか拒絶しないでください、私は男ですが、貴方のことが好きなのです。
人が人を好きなことがどうして悪いことなのですか。
むしろ、貴方と同じ性であることを、私は誇らしいとさえ思えるのですよ。
ですから、どうかそのような顔をなさらないで。
貴方を想うこの気持ちはいつも溢れているのに、いつも無に落ちて。
ぼたぼたと落ちる精には既に種が宿っているというのに。
どうにもできなくて、涙が流れました。



56瑜凌は「態」と「湿」と「情」を全部使って文章を作りましょう。

次に攻め入る場所でつかう策を提案するのに、孫策の部屋を訪れた周瑜は、寝台に転がっていた痴態を見て息を飲んだ。
孫策といえば、何事もなかったかのように椅子に座って卓の上の果物に手をつけていた。

「孫策!君は一体何をしているのだ!このような少年を・・・何とも思わぬのか!」
「んあ?あぁ。なんか・・・そいつ相手だと、手加減利かねぇんだ。」
「情けをかける相手だろう・・・大丈夫か?」

周瑜はすぐに少年の傍に寄り、無事を見る。まるで捨てられた娼婦か何かのようだ。
事の激しさを物語るように少年の体は未だしっとりと湿っていて、手籠めにされた余韻にぼんやりとしていた。
力のない茶色い瞳と目があうと、つい周瑜は身を引いた。
誘惑に吸い込まれそうな体。
女でもそうそういないだろう。
けれど、ここで己も獣となっては、この少年の居場所は狭くなるばかりである。
小さく頭を振って邪念を払うと、周瑜は寝台の上に投げ出された少年の腕を取って手を握った。

「君は、揚州の者か?」

少年は小さく頷いた。

「名は何と言う?」
「りょうとう。」

小さな口から出たのは、想像以上に掠れた声。つい周瑜は顔をしかめた。

「立てるか?」

凌統は少し太ももを動かそうとしたが、すぐに痛みに顔を歪ませて、周瑜はそれ以上動くなともう片方の手で制した。

「直ぐに人を呼んで運んでもらおう。今日は私の邸に行きなさい。そして湯をあびて、明日までゆっくり休んでいってほしい。後で私も帰るから、その時に私の笛の音も聞かせてあげよう。」
「・・・貴方は?もしかして、周瑜様ですか?」
「そうだ。」

すると、凌統は少年らしく小さく微笑んだ。

「周瑜様って、笛がお上手なんですよね。楽しみです。」
「ああ。君に特別な音色を聴かせてやろう、凌統。」

そうして弱く握り返してきた小さな手には、僅かだけれど小さなぬくもりがあって、周瑜は小さな弟が出来た気分になった。
さて、あとは後ろに控える義兄弟をどうやってこの少年と引き剥がすか。
策を考えねばなるまい。



57番外編・惇遼
張遼が魏に降ったと聞いたが、夏候惇は特別な感情は持たなかった。
ただ、大きな戦力がつき、孟徳の天下がさらに近づいたと、どちらかといえば好印象であったかもしれない。
だからか、突然張遼が己の幕舎にやってきた時も、少し驚いたがすぐに招き入れてやったのだ。

「どうした。」

夜は更けていたが、夏候惇は簡潔に尋ねた。武人にとって遅い時間などはない。ましてや遠征中の幕舎の中である。それ故、夏候惇も張遼も、いづれも鎧を身に着けたまま休んでいた。
張遼は、今にも双戟を振るわんとしそうな気難しい顔をして俯いていた。何かあったのだろうか。

「夏候惇殿、申し訳ござらん。」
「・・・?何だ?」
「魏に降って日が浅いとはいえ、斯様なことは言い訳にもならぬとは分かってはおりますが・・・」
「だから、何だ?」
「私の幕舎がどこか、分からなくなってしまいました。」

夏候惇は、目を見開いた。眼帯の下の左目まで剥いたような衝撃は久しぶりで、しばらく言葉も出なかった。
一体何をしていたのかと問うと、曹操軍の武具が見事であったので、見て回っていたのだそうだ。
張遼は、物々しい表情と格好であるのに、申し訳ござらんと恥ずかしそうに言っているものだから、久しぶりに声をあげて笑ってしまった。

「っお前のような者でもそのようなことがあるのだな。久しぶりに笑ったぞ。」
「そ、そのような・・・。面目ない。」
「お前も気が張っているのだろう。よかろう。今日はここで休んでいけ。」
「何と。・・・いや、しかし。」
「休むと言っても、孟徳のことだ。いつ何を言われるか分からんからな。覚悟しておけ。」
「・・・・・有難い。恩に着ますぞ、夏候惇殿。」
「これぐらいで恩を感じてもらっては困る。さっさと眠れ。」

夏候惇自らは卓の傍の椅子に座って静かに一つ目を閉じた。
張遼は申し訳なさそうに幕舎に入ると、空いた寝台を見て小さく笑った。

(斯様なことをせずともよいものを。私も武人ですぞ。)

そうして、張遼は幕舎の入口の一番近くにあった荷駄の前に腰を下ろし、背をもたれてつかの間の休息を得た。



58馬超と馬岱は「襲」と「無」と「口」を全部使って文章を作りましょう。

「岱よ、俺は西涼の死神と呼ばれているそうだぞ。」

そういって、いつものように魏への憎しみと己の正義について口を回す馬超の姿を、馬岱はいつもの笑顔で見て聞いていた。

(若がこういう話題を話す時だけ、俺って無口になるよねぇ。)

自覚はしている。
いつもは己のほうが饒舌であるのに、今はだんまりだ。
なぜなら、あまり同意できないからだ。憎しみに弁を振るっても全うしなければ意味がないし、正義などはそれぞれが抱えているもので、馬超の正義は馬超を死神と呼ぶ者にとっては悪でしかないからだ。

そのあたり、馬超は薄々分かっているような気がする。ただ、目をそらしているだけで。声高らかに叫んでいなければ、心が折れてしまいそうだから。
そんな隙でも見せてみろ、この首を狙う他の死神に襲われて体ごと憎しみに飲み込まれてしまうぞ。

(でも・・・本当に心から、別な誰かのために戦ったほうがいいと思うんだけどなぁ。)

「よし、行くぞ!岱!」
「はいはい、今日も頑張っちゃおうねぇ!」

それでも、馬超に何か言われれば、それに従ってしまうのは貴方の背中をずうっと追っていたいからなんだよ。

「ま、死神でもなんでも、若を狙う奴は俺が仕留めてやるけどね。」
「?何か言ったか?」
「ええ?何も?若ぁ、ほら、もう行っちゃおうよお!」

そうして、馬岱は獲物を手にして馬の元へと走り出した。
西涼の死神は風の如く、一人じゃなくて二人だってところ、見せてあげなくちゃね。



59子亮と子凌は「震」と「感」と「暇」を全部使って文章を作りましょう。
(※賢くて大人しい亮くんと、元気いっぱいな凌くんが、時々司馬懿や甘寧という恐ろしい人たちの邪魔を受けつつその都度カイゼル・遼に助けられながら、かだ先生に魔法のお薬を届けにいくという話前提です)

「ふっはははははははははは!諸葛亮、今こそその首を討ち取ってやるンバッ」

恐怖に震えていた亮くんと凌くんに、今まさに司馬懿が呪いの魔法をかけようとしたときでした。
カイゼル・遼が二人の前に降り立ち、司馬懿をやっつけてしまったのです。

「わあ、やっぱり泣く子も黙る張遼さんだっつの!」
「私のことは、カイゼル・遼と呼んでくださらんか。」
「ありがとうございます。カイゼル・遼殿。ここで追い詰めれられれば来ると思っていました。では、凌統殿、行きましょう。」
(感じ悪いの。諸葛亮って、あれがなければいい奴なんだけどな。)

そうして、カイゼル・遼は、私も暇ではないというのに・・・。といいながら去っていきました。



60趙雲と馬岱は「慰」と「自」と「魔」を全部使って文章を作りましょう。

偶々二人で見張りをしていた時であった。
武具や兵の配置の確認をしあって、他愛ない話に発展し、馬超の話になった。
趙雲は、馬超の武を素直に褒め、また、年の近い将ができて嬉しいとさえ言った。
馬岱は趙雲の話に笑顔を見せて頷くだけで、馬超の前ではあれほど馬超を鼓舞しているのに、意外と静かなのだな、と思った。
だが。
突然懐から妖筆が飛んできて、喉元に迫った。
早い。己は武に自信があるほうではあるが、それでも見きれなかった。
筆の先は趙雲の首に付くか付かないかの位置にあって、少し背を逸らした趙雲は、目を見張った。

「ねえ、趙雲殿。若を裏切らないよねぇ。」
「は・・・どういうことだ。」
「言葉通りの意味だよ。」
「それは、馬超殿は仲間だ、裏切るわけがあるものか。」
「そう。そうだね、でもそれだけじゃない。ほら、若で自分自身を慰めたり、そういう対象にも、しないでよ?それで若がその気になっちゃって、趙雲殿と死に別れなんてしちゃったら、若がかわいそうでしょ?」
「っ馬岱殿っ!」
「おっと、動いちゃ駄目。いいね、分かった」

趙雲は力強く頷いた。勝てそうにないと瞬時に悟ったのは、その瞳に悪魔が宿っていたからだ。
去ってゆく馬岱の背中は、いつも通り飄々としていた。



61子凌と凌操は「性」と「傷」と「優」を全部使って文章を作りましょう

遠征が終わり邸に帰る。邸が見えた時、いつも通り統が邸の前で待っているのが見えて、つい微笑んだ。
統がふいにこちらをみて、姿を捉えるとすぐに満面の笑みを浮かべて走り寄ってきた。
だが、完全に寄ることなく、統は少し前で立ち尽くしてしまった。

「どうした、統。父だぞ、帰って来たぞ。」

声をかけるが、統はじっと大きな瞳をめぐらし、食い入るように見つめるだけ。そのうち段々笑顔が歪んでいって、とうとうぽろぽろと泣きだしてしまった。
そして、ふらふらと歩み寄ってきて、鎧の前垂れのあたりを掴んだまま離さなくなった。

「ち、父上・・・怪我してる・・・。」
「ああ、そうだな。でもこれくらいの傷、大丈夫だ。生きてるんだ。統がいつも怪我するのと一緒だぞ。」
「一緒じゃないです、大丈夫じゃないです。」

統は少しばかり優しすぎる。
戦場で俺が見た痛みを、そして俺自身の痛みを感じ取っているのだろう。性別を間違えたのだろうか。・・・いや、しかしそれでも武人にならなければ。

「統、いいか。戦に行って、帰ってこなかった奴もいるんだ。統はまた父に会えてうれしいか?」

統は小さくこくりと頷いた。

「よし、では、父にかける言葉はなんだ?」
「・・・ぉ・・・おかえりなさい、父上。」
「よし。じゃあ、ちょっと邸に行って、薬の準備をさせてきなさい。湯も沸かすように言ってくるんだ。できるな?」

再び統はこくりと頷いて、そして頬をぐいと拭って、邸へかけていった。
空を仰いだ。

(ああ、やっぱり、いいなあ。)

傷は痛むが、心は晴れていた。






溜まったら随時更新していきたいと思います。