凌統寝起きドッキリ大作戦(甘凌陸)


こんにちは、陸伯言です。
事の発端は、主君である孫権様の提案よりはじまりました。
孫権様がどこから聞きつけたのか、

「10月10日は凌統の日らしい。いつも頑張っている凌統を励ましてやりたいのだが、私には酒宴しか思いつかぬ。陸遜、いい案は無いだろうか。」

と、私に相談してきたのです。
いい案も何も、別に凌統殿の誕生日ではないですし、私も案もという案も思いつかなかったというか、どうでもい・・・失礼、そこまでしなくともよいと思ったのですが、孫権様はいたく真面目にご相談されてきましたので、仕方なく、凌統殿に知られないように、私の房に目安箱を設置し、各武将匿名でよろしいので、それぞれ案を書いてだして下さいと頼んだところ、「凌統殿の寝起きを実況してほしい」という案が100通程入っておりました。しかも全て筆跡が同じです。しまいには「凌統の寝起きをRECさせろ」という文を見た時は、つい某将軍の邸に放火してやろうかと怒りを感じました。これならばいっそ案は集まらなかったということにして、孫権様に報告しようかと案を整理していた所、丁度丁奉殿に見つかってしまい(こんなに欲にまみれた案を丁奉殿に見せるわけにはいかないので、“凌将軍にお休みをさしあげたい”“凌統殿に書簡の整理を頼みたい”という案を見せて差し上げました。ですが、それがいけなかったのです)、全ての案を孫権様に見せなければならなくなり、結局、この100通を越す案は、通ってしまったのです・・・。



「というわけで不本意ながら、“凌統殿の寝起きドッキリ大作戦”を取り行うことになりました。解説と指揮は私、陸伯言が進めて参ります。そして、実際に策・・・いえ、凌統殿の部屋に行って実況しますのは・・・甘寧殿、甘寧殿〜、聞こえますか?」

陸遜は卓にあるノート型パソコンに声を掛けると、いきなり鼻のドアップが映り、さらには鼻息で画面が白くなる始末。甘寧が自分でカメラを持って撮影している結果なのだが、陸遜はおぞましい物を見せるなと言いたげに顔を歪ませてみせる。

「おはよ〜ございま〜す、甘興覇だぜ〜。ただいま、凌統の寝ている部屋の前にきていまーす・・・。」

しかし声だけは例に盛れず小声だ。それにしてもこの武将、ノリノリである。

「甘寧殿、顔が近すぎます。引いてください。そして鼻息が荒いです。一応先ほど注意を致しましたが、決して凌統殿には触れないでください。それから放送できない事もやめてくださいね。」
「おう。」
「万が一放送出来ない、私がまずいと感じた場合はすぐに朱然部隊を回しますので。」
「おうよ、任せとけ!」
「では早速お願いします。」
「おう!」

甘寧は懐から凌統の泊まっている部屋のカードキーを取りだし、逸る心そのままにマッハの速さでドアを開けた。
既に凌統が起き兼ねない物音に、いっそもう凌統殿が起きてしまえばいいのにと実況の陸遜は考えたが、甘寧が話し始めた。

〜突然ですが、ここより実況と解説による会話文でお楽しみください。〜

「侵入成功だぜ〜・・・ええっと凌統はどこだぁ?」
「さっさと探して終わってください。」
「おい、陸遜。」
「何でしょう。」
「ペットボトル、ペットボトル、ペットボトルがあります。」
「3回言わなくても分かります。」
「・・・中身「飲まないで、任務を続行してください。」
「あっ・・・!」
「どうしました、甘寧殿。」
「凌統発見したぜ・・・。スヤスヤ寝てやがる・・・。あ、コレ枕元に親父さんの写真かぁ?どんだけだよ。」
「どんな表情をしてらっしゃいますか?」
「口開けてヨダレ垂らしてる。馬鹿面だなぁ。・・・・あっ!!」
「今度はどうしました、え、なんか鼻息が突然荒くなってるんですけど。」
「陸遜殿。」
「キャラ変わってます。やめてください。」
「パンツ。」
「・・・。はい?」
「パンツ。」
「ええ、ああ。はい。」
「凌統のパンツがあります。」
「匂い「かがないでください。」
「えちょ、コイツノーパン?今ノーパン?うっそマジ?」
「いや、取り替えたんでしょう、それしか貴方の頭の中で選択支ないんですか。」
「・・・。」
「甘寧殿、パンツのお持ち帰りはご法度です。」
「チッ。」
「ちなみに何色でどんな型ですか?」
「あぁ?なんか・・・紫の・・・ビキニ?」
「・・・(凌統殿の趣味もなんというか・・・)続けてください。」
「陸遜、ちょっと布団捲ってみてもいい?」
「少しだけですよ。そっと、そっとお願いします。」
「・・・うわ!!」
「・・・凌統殿、脛毛剃ってますね。」
「こいつ浴衣着てる!」
「それはホテルのだからでしょう」
「えっ、脛見えるっつーことは大分上も肌蹴てんじゃねぇの?」
「うう・・・ん・・・」
「甘寧殿、黙れ。」
「父上・・・。」
「・・・今寝言で父上っつった。」
「・・・。」
「甘寧殿?」
「・・・。」
「甘寧殿?」
「・・・陸遜。」
「はい。」
「もう我慢できません。」
「えっ!ちょっとちょっとちょっと!駄目ですって!放送できませんから、ああ、もう行きましょう行きましょう!朱然部隊に伝令を!今すぐに凌統殿を起こしに行きますよ!」



陸遜と控えていたスタッフ(伝令)は急ぎ足で凌統の部屋へと行き、大きく扉を開けると既に半裸状態で凌統の上に飛び乗っていた甘寧と目があった。
陸遜は扉を開けた勢いのままに走り甘寧に飛び蹴りをかまして退けると、後ろから朱然が大きなパネルを持って丁度やって来た。

「凌統殿〜!起きてくださーい!」

と、陸遜がスヤスヤと寝ている凌統の頬をぺちぺち叩いて起こす。
少し睫毛を震わせながら僅かに開いた瞼の内の瞳は、小さく左右に動き、陸遜の姿を捉えると小さく瞬きをした。

「・・・ん・・・?」
「凌統殿、これ見てください。」

と、陸遜は朱然の持つパネルと、甘寧が放り投げたであろうビデオカメラを指差して見せる。
それでも凌統は未だ夢現、寝ぼけ眼のまま陸遜を見ている。

「・・・?・・・父上?」
「父上ではありません。ドッキリです。」
「・・・弩っ斬り・・・?」
「ああ、もう、面倒ですね、はい、大成功〜!!」
「・・・大成功〜・・・。」

どうしてか仕掛けられた凌統まで弱々しく応えてたのを見て、そういえばこの人は、寝起きが悪いんだったと、今更陸遜は思い出して、大きくため息をついた。
この欲にまみれた企画自体最初からやらなければよかったのだ。朱然と、そして陸遜の飛び蹴りを喰らって伸びていた甘寧を引きずり、陸遜は凌統の部屋を後にしたのである。

結局その日の夜、孫権主催の宴で凌統は日頃の行いを労われ、大いに楽しみ、企画とテープは陸遜の心の内と炎の中に消えた。





2012の凌統の日に書いたんですが、久々にはっちゃけました。
大丈夫でしょうか・・・。すんません、陸遜が酷い子になっちゃいました。