スイカとイチゴミルク



※現パロ&致しています。


三日前。ファミレスで夕飯を食べて、甘寧が会計をしていた時。
凌統はたまたま甘寧の財布の中に、正方形のピンク色の袋が入っているのを見つけた。
所謂避妊具のそれを、甘寧は己に一度も使ったことがない。
まず機能的に使う必要などないし、悔しいことに、凌統も中に出されることはまんざらでもないしで、この世に存在していることすら頭から抜けていて、怪しむ前に意外だと思った。
でも、甘寧は持っていた。

(誰かに使うのかぁ?俺に?まさかだろ。)
(じゃあ、誰に?)

だから凌統は、甘寧が誰に使うのか知りたくて、とても久しぶりに何となく自分でも買ってみたのだ。


そして事に及んでいる今、まさにゴムの存在を思い出して、凌統は、甘寧に使ってみようと思い立った。
自分でも丁寧にご奉仕していると思いながら、甘寧に気付かれないようにそれをそっと取り出して、封を開けて、上から下へ、くるくると包んでみる。
寝転んでいた甘寧は、驚いたように目を見開いてそれを見ていた。

「…なんでンなもん持ってんだ?おめぇ。」
「まあ、いいじゃねーの。黙ってな。」

ローションのお陰で最後まで難なくはめてやり、しばし眺めた。ゴムは緑色をしているが、やや窮屈そうに伸びて中の肉色が透けて見える。先端の細長い空洞部分がこちらに向かって申し訳なさそうに垂れているのが滑稽だ。
そんな様子でも、見事に天を向いているそれは、さながら夏に食べるスイカのアイスバーのようで、少しだけ美味しそうに見えて、凌統は笑ってぺろりと舐めた。
不味い。ゴムの味しかしない。純粋に顔をしかめた。

(…やっぱいらねぇか。)

凌統は無言のまま、避妊具としての役割を果たす前にそれを甘寧から取った。すると突然天地がひっくり返った。
甘寧が凌統を組み敷いたのだ。
甘寧は何故か怒っているようだ。凌統は、首を傾げながらきょとんと甘寧を見上げる。

「…てめぇ。」
「ぃって…なんなんだよいきなり。」
「そいつはこっちの台詞だ。何のつもりだ。」
「はあ?別に?何も。」

そのまま馬鹿力で無理矢理入ってきた。痛い。歯を食いしばる。
どうやら本当に不機嫌になったようだ。
本当に気紛れだったのに、俺が浮気をしているとでも思ったのだろうか。じゃあ、あんたの財布に入っていたアレはどう説明してくれるんだ。黙っているこっちの身にもなってほしい。…なんて、面倒になりそうなことは言わないことにしようと思った。
はたと甘寧の腰が止まった。

「俺が先に使おうと思ったのによ!」

といって、甘寧が取り出したのは、ピンク色のアレだった。
無造作に片手と歯で袋を破くと、中にもピンク色のゴムが入っていて、それは凌統自身にひたりと当たり、くるくるくるとそれを包んでいった。
ひんやりとしていて、微妙なゴムの絞まり具合に腰が震えた。

甘寧が凌統を上から見上げて、満足そうに口元をつり上げている。

「へぇ…可愛いもんだな。」

何を言ってるんだと凌統は思ったが、次の瞬間には声を出していた。中にいる甘寧ががむしゃらに暴れはじめ、ピンクのゴムに覆われた凌統自身の前を扱きはじめる。
途端に快感が脳天を突き抜け、何かが溜まってゆく。

「ん…ぅ、あっ!」

凌統は果てた。甘寧も、中で。
いつもの腹が濡れる感覚がない。当たり前だった、全部ピンク色の化学物質の中に収まっていたのだから。
甘寧がずるりと抜けていって、凌統は自分についていたピンク色を甘寧が取るのを、ぼんやりと見つめていた。
行く宛のない白い奴等が入ったそれを、甘寧は、目線の高さに持ってきてじっと眺めている。
凌統は何となく恥ずかしくなり、いつまで見てやがると言おうとしたら。

「イチゴミルクみてえ。」

と、甘寧は突然ゴムの天地を反対にして、中身を自分の舌に落としたのだ。そして口を閉じ、もごもごとする。
凌統はかっとなって身を起こして怒鳴った。

「バッ…!!何してんだあんた!」
「ああ?いつも口に出してるんだからいいじゃね「そういう問題じゃねぇ!このローションは飲んで悪いやつなんだっつの!」
「…確かに不味い。」
「ほら見ろ。」
「凌統の味はするんだがよ。」

甘寧は洗面台に行った。うがいの音を聞きながら、何てコイツは馬鹿なんだと凌統は心底思いながら、ベッドに再び横になった。

(同じようなことを思いついたってわけかい)
(あ〜、スイカバー…食べたいねぇ。)

あらゆる意味で本物が一番いいな、と思いながら見た窓の外では、木枯らしが吹きすさんでいる。大いに夏とはかけ離れた風景に、凌統は身を竦めて布団に丸くなった。







あの、実にすみません。色々すみません。