後遺症

※現パロです。致しています。何してるのかわからない甘寧×社会人凌統ですw



退社する間際凌統は、会社の同僚から呼び止められた。
同僚は明日の夕方、彼女とあるバンドのライブを見に行く予定だったが、都合が悪くなって二人とも行けなくなってしまったので、代わりに行ってくれ…というものだった。
そういう話ならばとチケットを貰ってはみたが、好んで音楽を聴き漁るほうではない凌統は、チケットに書いてあるバンド名を見ても全くピンとこないままだった。
帰宅し、冷蔵庫を漁っていた甘寧に早速尋ねてみる。

「なあ〜、甘寧、あんたさあ、ライブって行ったことあるかい?」
「あるぜ?・・・お、アイス見っけ。・・・あんま音楽は知らねえけどよ、付き添いで何回か。」
「あのさ、会社の奴からライブチケット、2枚もらったんだけど行ってみない?」
「何時だよ。」
「明日。」
「おう、いいぜ。」

そうして凌統は甘寧にチケットを見せてみるが、甘寧もバンド名を見て首をひねっている。
それ程人気のないバンドなのか、はたまた媒体に顔を出さないだけか。いづれにせよ、折角貰ったものだし、同僚に感想を言えるくらいには楽しみたいと思って、凌統はチケット2枚を財布に閉まった。




だらだらと会場に向かうと、既にライブは始まっていた。
意外にも、チケットはソールドアウトしていて、キャパシティ900のライブハウスのフロアは客でぱんぱんに膨れ上がっていた。
バンドのジャンルは所謂パンク。客はざっと見て男が大半を占めていた。前のほうでは様々な髪の色・髪型をした野郎共が、Tシャツ姿で汗まみれになって、音にあわせて激しく暴れている。その激しさといったら、ライブ開始間もないというのに酸素少なく、熱気が客の頭上に湯気となって見えるほどである。
こんなところに彼女と来たら、彼女はよほど好きじゃない限り引いてしまうんじゃないだろうかと思った凌統は、甘寧とともに後ろのほうに陣取った。
ふいに横を見れば、ステージを食い入るように見つめている甘寧の目が輝いているではないか。

「おい、俺こういうの結構好きだぜ。」
「ああ、好きそうだね、あんた。」
「なあ、凌統。もうちっと前行こうぜ。」
「やだよ、あんた一人で行ってきな。」

多分、甘寧は前のほうで他の客とともに暴れる気でいるのだろう。ぐいぐいと袖を引っ張られるが、凌統はそこから動こうとはしなかった。
凌統は、音楽は嫌いではないが、じっと静かに聴いているほうが性にあっていた。
それに、人が密集する場所はあまり好きではない。こういう場所に来ると、大体一番身長が大きかったりするのだ。今日だって、あたりを見渡してみれば、客の中で一番背が高いのは自分のようである。気休めに髪を降ろしてきたけれど、やっぱり気休めにしかならなかったようだ。それに、甘寧も自分程ではないが一般的に見て背が高いし、体躯もいい。そんなデカイのが2人も前のほうに行ってみろ、後ろにいる奴らが、ステージが見えないといって喧嘩を吹っ掛けてくるかもしれないじゃないか。
だが、甘寧は凌統の腕を引っ張って離さない。

「俺はいいって、ここにいるからさ。暴れてきなって。」
「いいからよ!お前も来いよ!あの、一番前のど真ん中じゃなくてあのへんの右端ならいいだろうが!」

爆音にかき消されまいと甘寧は耳元で声を張り上げて話すものだから、鼓膜がピリピリする。
凌統は仕方なく、甘寧に手を引かれて人ごみをかき分けて歩き出した。

「ほれ、ここなら問題ねえだろ。」
「・・・そうだねえ。」

先ほどより10メートルくらい前、フロアの一番端まで二人はやってきた。壁にぴったりと寄せている体の右側以外、色んな角度から汗ばんだ人の肌がくっついて少し気持ち悪い。
入り口でタオルを売っていたから、同僚の土産にも帰りに1枚買っていくのもいいかもな、と思った。
ふと、視線を後ろのほうに流してみる。甘寧はそのまま前に突っ込むのかと思いきや、凌統のすぐ後ろに落ち着いて、凌統の肩越にステージを眺めている。

「甘寧、前に行かなくていいのかい?」
「いや、いい。俺もここで。」

その間もライブは続いている。パンク特有の速くて明るい曲調に、凌統は少し飽きてきた。
(普通のこういうパンクよりは、スカっていうやつのほうがいいかもなぁ…)
さて、同僚に何て感想を伝えようか。腕組みをしながら右の壁にもたれ、ステージをぼんやりと見ていた時だ。
突然手が伸びてきて、尻を撫でられたのだ。しかも2度。
1度は誰かの腕がたまたま当たっただけかと思ったが、2度目は執拗に何度も撫であげてくるものだから、何だと後ろを振り返り睨みつけたら。
甘寧がいて、妙に納得した。

(ああ、なんだ、あんたか。…いやいや、納得する所じゃねーよ、何してんだっての!)

目があえば甘寧は悪戯っぽく首を傾げる。心底憎たらしくて、未だ尻を撫でくり回している甘寧の手の甲を咄嗟に抓った。
すぐに甘寧は腕をひっこめ、凌統も再びステージのほうへ向きなおったが。
暫くして、再び手を出してきた。
今度は両手。しかも、片方は脇腹を撫であげ、片方は…

「!!」

するすると腰を辿り、とうとう股間に触れた手が、中心をぎゅうと掴んだ。
びくりと体が大げさに揺れて、つい周りを見渡すが、皆笑顔でステージを見つめたままである。客の一人である凌統になど視線を送る者などいなかった。・・・一人を残して。
凌統も流されまいと、必死にステージを眺める。

ベースの奴、髪長いな。楽器に絡まないんだろうか・・・。
ああ、ギターの弦が切れた。
どうするんだろう・・・あ、ギター換えた。
一番前の野郎、ステージ上がっちまった。
おいおい、そのままダイブかい。
ボーカル、何言ってんのかわかんないねぇ、歌詞が全然聞き取れない…あ、今スコーピオンっつったか?
スコーピオン、スコーピオン、スコーピオン。
毒がまわるように、全身を・・・
・・・ああ、もう・・・

こんな時ばかり甘寧の指は繊細に動く。
下から上へなぞったり、螺旋を描いてみたり。
ステージを照らす沢山の色の照明が、チカチカと目の奥を刺激する。
肌のざわつきが止まない。息が熱い。これ以上されてしまったら、火がついて止まらなくなってしまいそうだ…。
甘寧の手が、パンツのベルトにかかって、咄嗟にその手を叩き落とそうとしたけれど少し遅かった。
茂みに指が触れて、一気に中心に血が集まり、パンツを押し上げる感覚がした。

「・・・凌統。」
「っ・・・ンだよ・・・っ」
「トイレ、行くか。」

耳元で囁かれ、もう、拒否なんてできなかった。
凌統は小さく頷いた。




未だライブは続行中だ。
防音壁など意味をなさぬかのように、通路を隔てたこのトイレにも、音漏れが盛大に聞こえてくる。
でも今は、そんな爆音がないと、声も、恥ずかしさも堪え切れない。

「ん、あ・・・」

凌統は壁に手をついて、甘寧が沈んでくるや否や、奥まで突きあげられて仰け反った。

「へへっ、ンだよ。いつもより締まってんじゃね?凌統さんよ。」

甘寧が後ろから囁くように呟き、凌統の首筋に舌を寄せる。
凌統はふるりと体を震わせて、甘寧の方へ体を捻りながらその頬へ唇を這わせると、ニヤリと笑った。

「こんなっ狭っ苦しいとこで…誰が盛るかっての…さっさと、終わらせろっ」

違う、本当は…
ギターリフの合間に、ぐちゅ、と、音が聞こえる。
ベースの低いうねりとバスドラが時折腹に響いて…腹の中にいる奴を妙に感じて、なんか、イイ。
何となく悔しいから、甘寧の耳元で出来る限り甘く囁いてやった。
そうだ、さっきの曲みたいに。
こいつにも、毒を…。
曲調が変わった。
今までとは打って変わって、棘を含んだ高速のカオス。パンクというより凶悪なオルタナティブだ。
いい、曲だな。
中が甘寧を絞りあげるような動きに変わる。
甘寧が低く呻いた。
後遺症に犯されてるという歌詞。
なんつー歌詞だ。

「あ・・・う・・・甘、ね・・・」

甘寧が前に手を回してきて、先端を弄ばれる。
ぐり、と、強く快感が背中を迸って、ブレイクした瞬間に凌統は甘寧の手へと吐き出した。




翌日。
凌統は、同僚にライブの土産としてバンドのグッズである黒いタオルとピンクのタオルを渡した。
ちゃんと同僚とその彼女の2人分だ。
あの後、甘寧は中に出すわ壁は汚れるわで、大の男2人で窮屈な個室の中で少々言いあいになり。
仕方なく甘寧を先にライブフロアへ戻して、凌統は自分の処理の後、飛び散った白いものを拭いて、その後はグッズ売り場でタオルを買って、ロビーでノンアルコールのドリンクを飲みながら音漏れを聞いていた。
ライブ終了まで、後にも先にもいい曲だと思ったのはあの1曲だけだったことは同僚には言わないでおいた。
しかし、同僚はそのバンドがいたくお気に入りで、凌統に気になる曲はあったか?どこが楽しかった?と執拗に聞いてくる。

「あぁ・・・。あの、なんか後遺症っていう歌詞がある曲が、よかったかなぁ・・・。」

「ああ、あの曲はな、あのバンドの曲じゃなくて、あのバンドが尊敬しているバンドの曲なんだ。尊敬しすぎて、いつも1曲を選んでカヴァー演奏してるんだよ。まあ、俺も大好きな曲だよ。

(なんだ・・・。)

甘寧は、あの曲をちゃんと聞いていただろうか。
分からないかもしれないな。
久しぶりに聴きたいCDができたけれど、聴いたシチュエーションが不純すぎるから、こっそりとレンタルしてipodに入れようと、凌統は会社から一番近いレンタルCD屋を頭の中で考え始めた。








自分がライブ大好きなので、2人がライブハウスにいたらってことでこうなりました。
大きい2人がいたら、かなり目立つだろうな〜。そして甘寧をダイブの発射台に使いそうだなあw
後遺症ってのは、黒/夢さんの曲です。初期清さんの声はちょっぴり凌統の声に似てると思うんですが・・・私だけか。
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