勾陣が落ちた日6※R-18(無双OROCHI無印甘凌)








※無双OROCHI無印ベースの話です。








それから二人は、馳走の礼として壊れた家の修復を手伝い、空家の寝床を借りて身体を休めた。

「甘寧、起きたらここをすぐに出発しようぜ。」
「おうよ、とっとと船を見つけねぇとな。」

凌統は甘寧の返答に力強く頷き、毛布を被って横になった。
目を閉じて、民の言葉を思い返す。

(大きな船が通ったのを見て・・・)

船という単語だけでも心が躍る。
孫呉の船だろうか。味方が乗っていればもっといいけれど、孫呉で使っていた勝手知ったる船であれば、それだけでも強い味方が付く事になる。
楼船だろうか、蒙衝だろうか、それとも闘艦だろうか。走舸でもいい。凌統は気分が高まって、毛布に隠れた口元を綻ばせた。
横に寝ている甘寧の視線が、こちらに向いているのに気付いた。凌統は、甘寧に背を向けているから、どんな表情をしているかは分からない。
甘寧の視線を受けながら、凌統は敵の親玉のことを考えた。
もし、孫呉を倒したオロチこそが今の己の真の敵だとしたら、今後ろにいる甘寧は、完全に味方だ。凌統は心のどこかでほっとしている自分に気付いた。
今まで甘寧を憎んできたのは、父を目の前で殺されたのだから当たり前のことだ。
あの時の光景は、未だに瞼の裏にべったりと貼り付いて離れない。だから、仇を取らなくては親不孝になる。
でも、この世界に来てからの甘寧は、今の凌統にとってたった一人の味方で、仲間で、行動を共にせざるを得ない。そうして気付いたのは、仇も今や立派な孫呉の将だという事実。

(希望が出てきた、のかな・・・)

いや、きっとそうだ。
味方といえる人間がいる。
その中に甘寧は・・・
今なら甘寧を、許してもいいのかな・・・。

(絶対に、言わねぇけどな。)

未だに背中には、甘寧の視線がちくちくと突き刺さる。
何をそんなにじろじろ見ているのやらと、凌統は身を縮めて、眠りにつくために毛布を胸のあたりに寄せた。
うとうととし始めた矢先だった。
後ろから衣擦れの音がして、凌統は突然腕を取られた。何だと思う間もなく、後方に手を伸ばされて、掌が生温かく柔らかいものに触れた。
直接手に皮膚に触れているのは甘寧の服だが、その下の妙に見知った感触は、手の位置から察するに・・・
凌統は瞬時に手を払いのけ、ほぼ同時に過振りを振って甘寧の顔面を殴り付けた。
股間を、触らされたのだ。

「・・・何すんだ・・・。変なもん触らせんな!」

怒鳴りながら甘寧の瞳を見て納得した。すっかり獣の目になっている。
肉欲がこみ上げてきて、近くの人肌をとでも思ったか。だが、甘寧は男だし凌統だって男である。凌統は仇にそんな対象に見られたことに、つい逆上した。

「・・・。」

諦めたのか、甘寧は殴られた頬をさすりながら、黙って凌統に背を向けた。それを見て、凌統も大きな動作で自分の毛布を被り直し、甘寧に背を向けて寝転がる。
だが、一度火が付いた欲を覚ますには、余程の根気が必要で、甘寧は欲に従順な性格であることは、凌統だって知っていた。
隣で、衣擦れの音がし始めた。
甘寧が自分で慰めだしたのだ。
凌統はつい息を飲み、ぎゅっと瞼を閉じる。
動きに合わせて小さく響く鈴の音、そして衣擦れ。その合間に、低い呻きが深い吐息とともに吐き出されて、とうとう粘り気のある音が聞こえ出した。
凌統は気が気でない。
親の仇のこんな場に居合わせたくないし、かといって逃げ出すことも出来ない。ぎゅっと毛布を力いっぱい握りしめて、息を顰めながら早く時が経つのを願うが、凌統はふと、己の違和感に気付いた。
恐る恐る目線を己の足のほうへ辿ってみると、何と言う事だ、自分まで反応してしまっているではないか。

(ああ・・・どうしてくれんだ、畜生。)

ここで仲良く仇とともに自分を慰めあうなんて寂しすぎる。この村に若い女はいなかったし、いやいや何を考えているんだ。凌統は細く息を吐いて、次々と沸き上がる欲をどうにかしてやり過ごそうとするが、手に残っている甘寧自身の感触がそれを許してくれない。
甘寧の切羽詰まった気配もまた、無理矢理欲を引きだそうとしてくる。
今・・・
孫呉はない。甘寧は味方で・・・
ああ、なんて都合のいい理由を見つけてしまったんだ。
後悔するのは、俺なのに。でも、今、どうにもできないんだ。

「・・・おい、甘寧。」

凌統は、甘寧のほうへ寝返りを打った。

「手、貸してやるよ。」

忙しなく動いていた甘寧の動きが止まり、顔の半分をこちらに向けた。
僅かに見える瞳は、孫呉の旗のように真っ赤に燃えているように見えた。





この村が夜で、本当によかったと凌統は思った。
家屋の中は暗いが、屋根に組まれた板の隙間から星が見えて、甘寧の体の輪郭が浮き彫りになって見えた。その顔の中央の、濡れたようにぎらつく二つの眼(まなこ)は、しっかりと凌統を捕らえて離さない。
凌統は、甘寧の傍にやってくると、既に甘寧が身体をこちらに向けているのがわかった。
肩で息をしている。いよいよ飢えた獣のようで、その手が乱暴に伸びた時につい、凌統は肩を竦めてしまった。
甘寧は凌統の手をきつく掴み上げて、既に熱い棒と化しているそれごと握り込み、深く息を吐いた。
もう逃げられない。凌統は腹を決めて、少しずつ上下に扱き始めた。
再び甘寧が息を吐く。肩のあたりにかかって凌統は身震いした。けれど、反応してしまっている自分の下半身だけは、甘寧に黙っていなくてはなるまい・・・。

(何してんだ・・・早くイっちまえよ。)

男相手にこんなことをするのは初めてなのに、本能は環境が変わっても自重しない。むしろ、生を求めてより貪欲になっている気がする。
どんどん濡れ出す掌に比例して、鼻に雄のにおいが漂ってきた。自分の息も上がっている。
顔を顰めるのを隠すことなく目線を天井の方へ向けたら、丁度流れ星が見えた。
あの星は、確か天の中心にある勾陣の星。

「!」

突然下半身を掴まれて、凌統は大げさに身体を揺らして腰を引いた。硬くなった自分自身が見つかってしまった。甘寧が舌舐めずりをしたような気がして、凌統は唾を飲み込む。

「何だよ、てめぇもいい感じになってるじゃねえか。」
「掴むなっ・・・俺はいいから、早く離せって!」
「馬ー鹿、やるなら一人より二人ってな!」

言うや否や、妙に慣れた手つきで甘寧は凌統の下履きをあっという間に下にずらし、出てきた凌統自身を強く掴みあげた。そして息付く間もなく、目から火花が出そうな刺激に襲われた。

「顔・・・見んなっ」

凌統は甘寧の肩に顔を埋めて、息を殺す。負けじと亀頭を抉るように親指を擦りつけたら、甘寧は低く呻き、裏筋を何度も往復する動きをして、いよいよ凌統は悲鳴をあげそうになった。
溢れる吐息に声が混じりそうになるのを必死に抑えて、何とか持ちこたえようとしても、甘寧にこうされてしまっては、あとは果てるのを待つのみ。

「う・・・っ、ぁ・・・」

衣服はいつの間にか乱れていて、露わになった鎖骨に甘寧が噛みつく。喉が震え身体が燃えるように熱くなり、凌統はあっけなく果てた。ほぼ同時に甘寧も。
互いの荒い息が小さな空間に響く。片手に残った白い体液はまさに生の証で・・・身体の奥に燻った炎は未だ燃えあがったままだった。

「おい、凌統・・・」

 ああ、俺はどこまでこいつを許そうとしているのだろう。

「続き、しようぜ」

もう戻れない。・・・今は、戻る場所がないからと自分に言い聞かせ、また、そんな自分にやや嫌悪しながら、凌統は弱く頷いた。



7へつづく


オフ用に1年以上前に書いた話なんですが、出しそびれた感がしてw、
この際なのでオンにあげることにしました。
次の7は致さないです。