かんちがい(ppw アラトリ)






トットリは、その身体能力を生かして時々ガンマ団本部内でも身軽に動きまわっている。猛烈に仕事に追われている時は猛ダッシュ、時々ジャンプも織り交ぜて、後輩以下の団員からは時折絶叫を浴びる。故に、シンタローからは、“お前に轢かれる団員が出てくるからやめろ”と言われていた。
しかし今、本部の事務室20階からの連絡で、最下層の倉庫から書類を探しだしてきてほしいと言われたのだ、そんな時ぐらいはエレベーターではなく自分の足で行ったほうが断然早い。トットリは非常階段を使い、早速駆けだした。
しかしどうしたことか、今日は中々身体が上手く動かない。
本部の最下層は地下10階。ライトはついてはいても、辺りの気温はとても冷たかった。
身体が動かないのは、その冷たさに身体が悴(かじか)んでしまったせいだと思ったのだが。

「ぉっ・・・」

書類を見つけ、三角飛びで階段を上っていた時だった。いつもなら少し爪先に力を入れれば難なく跳んで着地することができるはずなのに、上手く壁を踏みこめず、下駄の歯が階段の手すりにつっかえてしまった。体勢を崩したトットリは慌てて受け身を取り、そのまま階段の踊り場に着地した。
が、僅かに視界がぶれて、瞼をごしごしと擦る。
この間の戦闘では傷を受けてはいないし、頭を打つようなこともなかった。

「?」

事務室の20階に辿りつき、書類を渡して部屋を出てからトットリは何となく嫌な予感がした。
いつもの、敵の気配を察知するようなそれではない。
自らの体がざわついている感じだ。
何か大きな天変地異があるのでは、と思った時、隣の事務室からアラシヤマがでてきた。

「「うわ。」」

双方顔を見るなり一言目が見事に同じでさらに言うタイミングまで同じとは。トットリは不愉快極まりないと眉間に皺を寄せた。ああ、きっと身体のざわつきはこいつの気配を感じたせいだ。
アラシヤマはといえば、トットリを見るなり不快の中にやや驚愕の表情を浮かべていて、トットリは何か僕の顔についてるだらぁと思ったが、別に口を開くことでもないかとトットリはそのまま歩みを進めた。
何故か、アラシヤマも同じ方向に歩いている。

「・・・ついてくんなっちゃ。ヒキコモリ菌がうつる。」
「ただわてもこっちに用事があるだけどす。」

トットリは早歩きのまま考える。この身体のざわつきは、アラシヤマのせいだ。
きっとそうだ。悪寒までしてきた。
とうとうアラシヤマのヒキコモリ菌がうつったか。
早くこいつから離れなくては。

「トットリはん。」

名を呼ばれたトットリは、その場につい立ち止まってしまった。
次にはやや冷たい掌がトットリの片方の頬を覆い、冷たい唇が、自らの唇を覆った。
瞳は開いていた。
ああ、僕、アラシヤマにキスされた。こいつ熱操るのに意外と掌とか冷たいっちゃね。あれ、なんで頭ぼんやりしてるっちゃ。そげだ、とうとうこいつの菌入った・・・。

「トットリはん、あんさん物凄い熱ありますえ。」
「・・・へ。」
「お顔、真っ青や。ドクターのとこ行きたくなかったら早ぅ帰るこっとすな。」
「・・・・・・お前にうつすからええっちゃ。」

そうか、僕が菌持ってたのか。
あのざわつきは唯の体の不調だったのか。
ぐるぐると頭の中が回り始めて可笑しくて、トットリは笑いがこみあげて来、クスクス笑いだした。最初から持っていた何かが暴れ始めたように、それは、人を殺したい衝動に駆られた時にも似ているが、身体が上手く動かない。
天変地異と身体の不調とを一緒にするなど、なんて馬鹿みたいなんだ。
ああ、面白い。

(ドクターのとこ行きたくない・・・自分で丸薬作ろ・・・)



アラシヤマは、近くの部屋に資料を運んでいたのだが、ずるずると壁に凭れるように歩いてゆくトットリの後ろ姿を見つめていた。
そのうちクスクスとトットリの笑い声が聞こえてきたものだから、とうとうあの忍者の頭はおかしくなったのかと思ったが、それが自らの唇のせいだったら少し愉快にも感じて、ふんと鼻で笑った。

(インフルだったら嫌どすな・・・このあとワクチン接種してきまひょ。)
(にしても、あの忍者、普段の熱はどれくらいなんやろなぁ。)
(・・・あかんわ。もうわてにも菌がうつりそうや。)








トットリ診断結果:喉から来る風邪。その後、インフルワクチンを接種しました。
そして何故かインフルワクチン接種したアラッシーがインフルになりました。
その頃ミヤギくんはジャス(宮城ではジャージをジャスという・・・らしい)を着ながらうどん食べてました。その後、書道を嗜みました。