プレゼント交換(ppw グンマ&トットリ)






いきなりグンマ直々にお呼びの声がかかったトットリは、あのドクターのように何か人体実験に使われるのではと、敗戦目前の前線へ向かう気持ちで研究室へ足を運んだ。

「何だっちゃ、馬鹿息子。使うならとっとと僕の体使えっちゃ。」
「やっほートットリー!」

シュッと扉が開くと同時に声をあげたトットリは、目の前にいたグンマの姿にやや目を丸くした。
まずグンマの服装がいつもと違っていた。白衣でもなくベストとパンツを合わせた上下でもなく、ネクタイもしていない。
スーツのパンツはこげ茶色のそれのままであるが、上に着ている物の趣が違う。長いボーダーTシャツにやや淡いピンクのカーディガンを羽織っていて、その上には白いマフラーを巻いている。
その姿のまま笑顔で近寄って来たグンマは、トットリの両手を取って、にこにこと笑うばかり。

「・・・キンタローはどげした?」
「キンちゃんなら、シンちゃんと一緒に外交に行ったよ、だから今がチャンスなんだよ!ねえトットリ、これから僕のショッピングに付き合ってよ。」
「・・・へ?」
「もう、ショッピング!買い物だよ!前にキンちゃんと行った時はなぁんか微妙に雰囲気違う店に連れてかれたし、ミヤギと行ったらミヤギが声かけられまくっちゃって。だから、今日はトットリの番ね!」

と、言われるがままに黒いコート(きっとキンタローのものだろう。トットリには少々サイズが大きいが気にする間もない)を着せられ、そのまま手を引かれるようにしてガンマ団の研究室から外に飛び出した。





「うーん、これはおとーさまの分でしょ、コタローちゃんも決まったし・・・シンちゃんはどうしよう。ねえトットリ、シンちゃんの趣味ってどういうのか分かる?」
「僕に聞かれてもなぁ。」

ショッピングに行くというから服を買いにいくのかと思いきや、少々違っていた。
親類へのクリスマスプレゼントを買いに行くのだという。グンマらしいといえばらしいが、トットリは内心なぜ自分が選ばれたのかがわからなかった。もっと身近な部下がいなかったのか。
しかも移動手段は電車である。トットリはいいにしても、金髪碧眼のグンマは人目を引き、ミヤギと一緒に居る時よりもずっと居心地が悪い。それは目的地に着いてからも同じで、目的地は若者が集う場所であり、通りすがる人ほぼ全員の視線を浴びることになろうとは、数刻前のトットリは想像もしていなかった。しかもグンマは上司の親族。いつ誰に狙われても可笑しくはない。トットリはこれは護衛もせんといけんっちゃと気を引き締める。
が、本当はグンマだけではなくトットリ自身も目を引いていたのだが本人は気付いていない。
辺りはクリスマスの緑と赤の2色で彩られていて、どの店でもセールを行っている。グンマは開発するメカから想像するより意外と審美眼は持っていて、手の籠に入っているのはやや渋いタンブラーと、そしてスープでもコーヒーでもどちらでも飲めるであろうやや大きなマグカップが入っている。
結局、グンマがシンタローにと手に取ったのは、『焦げずに油汚れもすぐに落とせる!』という宣伝文句が書いてあったフライパンを籠に突っ込み、そのまま会計に小走りに行った。

「買い物はそれだけがいや?」
「え〜と・・・ううん、あと一か所。さて、電車移動だー!」
「・・・また?」


 
二人は電車を乗り継ぎ都心部へとやってきた。
その場はクリスマスとはかけ離れた書店街で、先ほどの若者に溢れた街とは裏腹に往来している年代が幅広いせいか心なしか静かだ。
こんな所で何を買うのか。研究に使う本だろうかと思ったら、グンマが入ったのは絵本を取り扱う書店だった。
そしてグンマはにこにこしながら両手に絵本を取って、どれにしようか迷っている。

「・・・コタロー様へのプレゼントだらぁか?」
「ううん、キンちゃんにだよ。」
「え?」

キンタローに絵本・・・。
そこで思い当った考えに、トットリは心の中でとても納得した。
キンタローは、あの南国の島で生まれたに等しい。頭脳が良く体格もシンタローと同じとはいえ、すぐには育たない何かがあるのだろう。

「キンちゃんはね、今までのこと全部辞書で調べて頭の中に入れてるんだ。僕とか高松があげた辞書全部、読破して覚えてるんだよ。読む本のグレードもアップしてきて大変なんだよ。でもだからデータ分析はとっても強い。・・・でもね、感情の意味を僕に教えてくれっていうんだ。“苦しい、悲しい、嬉しい、そういうものは覚えた。グンマ、しかし切ないとは何だ”、だって。キンちゃんのその言葉が切ないよ、感情は心から溢れてくるものなんだよって言ったら、首を傾げられちゃった。」
「・・・覚えるもんじゃあないっちゃ。」
「だよね。だからね、絵本を探してるんだ。」
「・・・僕も何か絵本読んでみちゅうかなー。」
「あはは、大人になってから読むと結構面白いんだよ。」

そんな風に笑顔で話すグンマ。
お前が欲しいもんは何だっちゃと僅かに思ったが、当然のようにみんなの幸せという答えが返ってきそうで、その“みんな”は一体どのくらいの人間が入っているのか、そちらのほうが気になるから、トットリはあえて口にせず、グンマの笑顔を黙って見ていた。





結局グンマはキンタローに5冊程絵本を買い、ガンマ団へと帰った。
帰りも電車だったのは言わずもがなである。が、周囲から殺意を感じなかっただけまだましだったかと、ガンマ団に無事戻ったトットリは本当に心の底から安堵したのである。
そしてやってきたクリスマスはただ寒いだけの日で、残念ながらホワイトクリスマスにはならなかった。
そんな日でもトットリの“仕事”は“仕事”をする。いつも通り、あっさりと任務をこなしてガンマ団に戻ってくると、その帰り足で青の一族の住まうあたりのフロアがある外にやってきた。

「・・・グンマとかキンタローなら人工で雪降らせること出来るだけぇ、プレゼントっちゅう程でもないぞなぁ。」

その場で能天気雲を呼び出したトットリは、下駄の面を大雪にした。

その頃、青の一族達はクリスマスパーティーを開きながら、南国の彼の誕生日を祝っていた。
降りだした外の雪に気付いたグンマが思わず窓辺に走り寄り、ホワイトクリスマスだね、とキンタローとコタローに笑顔で告げていたことは、トットリは知らないままである。





(おまけ)
年末もガンマ団はいつも通り過ごしている。
その中で、トットリは任務に行く途中のシンタローとすれ違った。

「トットリ。こないだの雪、ありがとな。」

すれ違い様に僅かに聞こえた台詞は確かにシンタローの声で、やっぱりシンタローは気づいたかと、トットリは何事もなかったように歩を進めた。








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でもグンちゃんのターンでしたね。ていうか、殆ど接点なさそうでどうしたものかと思ったけど、二人でショッピングしてたら可愛いなと思って。
そして、キンちゃんに感情の教育しているのがグンちゃんだったらいい。従兄弟ズでは、グンちゃんが一番精神的にお兄さんな気がするこの頃です。
そして・・・修正する可能性大です・・・