ヒトカタ(ppw トットリ+アラシヤマ+ミヤギ)



シンタローが遠征中、ミヤギとトットリ、そしてアラシヤマとコージは久しぶりに4人で任務を遂行していた。

敵対していた国と内応していた某貿易会社を、会社丸ごと潰せという任務だった。
会社は数千人の従業員を抱える巨大組織。それだけでも一つの勢力ができそうなくらいで、確かに僕等一人二人だけで潰すには無理だらぁとトットリは思った。

流石に伊達衆4人が集まれば、任務は成功。
今はその大きな会社の部屋一つ一つを、アラシヤマが燃やしている。コージはガンマ団本部と連絡を取り合っている最中。
ミヤギとトットリは、一番の標的であった社長を始末したあと、社長室で見つけた重要秘密事項と記載されていたファイルの束を持ち、近くの川辺にやってきてきた。
辺りは既に夜のなか、二人はファイルの中の紙を破いては川に流し、川に流し、ぼんやりと時を過ごしている。
そんな二人の耳に、ぽちゃりぽちゃりとした川が流れる音と、ビルの内部を燃やしているアラシヤマの発火音が次々と届く。

「アラシヤマも馬鹿だなや。ビル一つぐらい一発で燃やせんべや。」
「さあいな。隠れてる人間でも探してるんだがな。あいつ、持ってる技の割に派手なの嫌いげ、ああいうネチネチしたやり方似合うっちゃ。」
「んだな。あ、トットリ、見て見て。」

ミヤギは突然、自らの生き字引きの筆の先の数本を切り、近くの小枝に取り付けた。さながら面相筆サイズとなった生き字引きの筆を片手に、今度は破いていた書類を人形に切りとり、そこへ鳥と書けば、紙のそれは腕をぱたぱたと動かして宙を舞い始める。

「おお!!ミヤギ君凄いっちゃね!!」
「この生き字引きの筆、オラが自分で作ってっかんな。オラが作る筆はぜぇんぶ生き字引きの筆になんだ。」
「なぁんだミヤギ君!そげな凄い技持っとったんだいや!」
「トットリィ、そんなに褒めてもなぁんも出ねぇぞ!」
「んじゃあ僕も!」

そんなミヤギの技を見て目を輝かせたトットリは、やはり人形を作り、ふうと息を吹きかける。
すると、こちらは七夕の時の短冊が風に舞う時のような、不自然な動きでゆらゆらと空中に留まっている。

「おぉ!?トットリ、これもおめぇの技か?」
「あ〜・・・技っちゅうか・・・そう、技っちゃね。風の気を吹き込んだっちゃ。」

そこまで言って、トットリはにっこりといつもの笑顔で返した。
ミヤギの技はどうだが分からないが、トットリは嘘を言った。それは忍術と呪術を混ぜた自分の“術”だ。
「償物(あがもの)」。
ミヤギはきっと単に知らずにやったのだろう。でもトットリは知っている。この人形に切った紙は、呪(まじな)いに使う道具なのだ。人形(ひとかた)に作った物に、生身の人間の罪や穢れを背負わせて処分する立派な道具。
それからしばらく二人は子供のように、無邪気に人形を作っては空に浮かべて笑った。
後ろからはドォンドォンと、アラシヤマが未だにビルの内部を燃やしている音。まるで花火が上がった時のようで、日本の祭りのような気分になってくる。
しかし、川辺には異様な光景が漂っていた。
ゆらゆら舞う紙人形。
今日殺した人間、今まで殺した人間の数に比べればとても少ない。そして、頭上にある星の数に比べれば、もっともっと少ないけれど。
二人はいつしか紙を破くのを止めて、その光景をずっと眺めていた。

突然、空中に漂っていた全ての人形に炎が灯り、また、二人のまわりにあった書類のファイルも同時に燃えだして、二人は思わずうわ、と口にした。

「お二人して、何無粋なことしてはりますのん。」

二人が振り向いて、アラシヤマがこちらに近づいてくる姿を捉えたのと、その背後のビルが大爆発を起こしたのは同時だった。

「うっわ、おめぇ気配消して近づいてくんなや。」
「煩いどすなぁ。お二人がしてはったそれ、呪術とちゃいますか。」

ミヤギはアラシヤマが何を言っているのか分からなかったが、トットリは十分に理解していて、それでもミヤギに倣って知らない振りをする。

「あぁ?ヒキコモリがちみちみ蟻んこ潰してるお仕事してたから、オラ達暇で遊んでたんだべ。」
「そりゃあけったいなことどすなぁ。あんさんらとわて、同じお仕事してるっちゅうのに大体わてがやったもんじゃないどすか。こりゃ報告せんとあかんわ。」
「でも、これ・・・」

トットリは振り向き、燃えながら川に落ちては流れてゆく人形を見て呟いた。

「鬼火みたいっちゃ。」
「・・・わてには、灯篭流しに見えますけどな。わて、こういう儀式をお遊びに使うんはほんに嫌いどす。」
「・・・・・・フン」
ミヤギは即興で作った小さな筆を川に流し、興が覚めたと言わんばかりに肩を竦め、その場を後にした。
その後を追うようにトットリも。

川に一番近い橋までやってきたトットリは、ふと後ろを振り返った。
アラシヤマは、燃えた人形の残骸をずっと川辺で見ている。
未だに灯篭流しを見ている気分なのだろうか。そんな時期はとうに過ぎているし、今更そんな事をしても自分達には血のにおいに慣れてしまったというのに。
顔をあげたアラシヤマと目があった。

次の瞬間、トットリはアラシヤマの背後に降り立ち、耳元で囁く。

「安心してごせぇ。雨の匂いがする。もうじきこのへんに大雨がくるっちゃ。お前が燃やしたもん、ぜぇんぶ無くなる。」

そして、トットリはその場で瞼を閉じて合掌した。

「これくらいで僕等がしてる事が贖えるなら、いくらでもするっちゃ。」

そして風が舞い辺りの灰が舞ったとともに、トットリが姿を消した。どこへ行ったかと思えば、既に先ほどいた橋のあたりいて、いつもの屈託のない顔でミヤギを追っていったから、今度はアラシヤマが舌打ちをする番になった。


(お天気操れる忍者はんは、時々空気も操るから好かんわ。)
(ヒキコモリは空気読めるのに好き嫌い多くて好かんっちゃ。)





アホな子ミヤギは本当は裏の世界が似合わないような気がしてならず、どうして士官学校に入ったのかなぁと考えたら、
男をあげたかったか、やっぱり最初から何かしら能力を持ってたのかなあと思いました。
で、忍者はんと祇園のお兄ちゃんは日本の儀式に詳しいといいな。