現パロです。
バイトだ何だでわりと休日でも人の少ない長曽我部家だが、今日は珍しく盛親以外の兄弟全員がそろっていた。
何もすることがなく家にいる三人は、リビングに面している和室に川の字になって寝転がって、部活に行った盛親の帰宅を今か今かと待ち望んでいた。
この家の食事はほぼ盛親が作っている故に、昼飯がまだなのだ。
それなりに飯を作ってみようかと冷蔵庫を開けたはいいがマヨネーズしか入っておらず、信親は“マヨラーじゃないのに”とぼやいて肩を落とした。
おやつは10時に奪いあうように食べてしまったし。レトルト食品のストックもきれているし、何か買ってこようにも三人の有り金合わせても30円足らずで財布もひもじい有様。(一人はバイトの給料日前、一人はプラモの買い過ぎ、一人は服の買い過ぎ。)
だから、ひたすら寝ていることで空腹を紛らわそうとしているのだ。
三人はただただ無言のまま、天井を見つめている。
親忠の腹がぐぅと鳴った。
「ねぇ、信ちゃん。あたしもう限界です。」
「盛はずっと電話繋がらないし…どうしたのかな?」
「・・・。」
「毛利に行ってご飯恵んでもらおうかぁ…」
「でも見返りが怖いね…」
「・・・。」
「和ちゃん?死んでないよね?」
親和は軽く寝返りを打って応えるが、その顔には死相が出ていた。
そんな二人を心配したのと自らの空腹の限界もあって、信親はもう一度盛親の携帯に電話してみる。
最初に携帯に電話してから4時間が経とうとしているが、一向に出ないのだ。事故に巻き込まれていたらどうしようと考えだした時、丁度タイミングよく家の電話が鳴ったので信親はよろよろと立ち上がり受話器を取った。
「盛親?」
”信親殿か。”
「・・・・・・隆景?」
電話の相手は末っ子は末っ子でも、隣の毛利の末っ子だった。
動いたことでカロリーを消費し盛大に腹が鳴ったが、隆景から電話が来ることは初めてといってよく、信親は空腹を忘れて嫌な予感が当たりそうな気がした。
「何?」
“盛親が・・・そうだな、あの制服は婆娑羅二高だな。何人かの生徒に拉致られて取り囲まれている。”
「はあ!?ばっ、場所は?」
“5丁目の大きな資材置き場。近くに婆娑羅勤労センターなる建物がある。”
「隆景もそこにいるのか?」
“近くにいる。一応追ってみたが、囲んでいる男の数が半端ないから私が出たところでどうにもならない。”
「わかった、今からそっち行くよ。ああ!!それから!」
“何だ。”
「アンパン3つ!買っていて下さい!お願いします!!」
電話の内容と信親の様子がおかしいことに気付いた親和と親忠は、珍しく真剣な顔をして体を起こしながら尋ねた。
「どうしたんです?盛親からですか?」
信親は首を横に降った。
彼はしばらく黙ったまま俯いている。
「隆景だった。盛が、婆娑羅二高の奴等に拉致られたんだって。」
やがてこちらを向いた表情はいつもと同じ穏やかなものだったが、一瞬だけ怒のオーラを放ったのを二人は感じとっていた。
こんな風な長兄は、本気で怒っている。
「へぇ。それは穏やかじゃないね。・・・絡まれてるのかな?」
「多分な。だから俺ちょっと行ってくるわ。」
「場所わかんの?」
「詳しくは・・・。5丁目の、婆娑羅勤労センターの近くって。」
「僕、その場所分かります。」
「はあ!?まさか和ちゃんも行く気!?」
「その近くに全国的に有名な武器取り扱い店があるんです。“も”ってことは親忠も行く気ですか?」
「当たり前でしょ!?」
親和の体調はいつも通り(あまりよろしくないということ)だというが、この間処方してもらった栄養剤がとてもよく効くそうで、これがあれば少しの間運動もできるとマフラーをぐるぐる巻いて薄く笑った。
一方親忠を見れば、珍しくジーンズをはいてウインクしてみせる。
信親はダウンジャケットのポケットに携帯を突っ込み、玄関に向った。
表面は常を装ってはいるが、実は腹腸が煮えくりかえるほど怒っている。大切な弟が絡まれているのだから。三人はいつになくやる気満々だ。
「じゃあ、皆で行くか!」
三人は空腹も忘れて家を飛び出した。
Aへ続きます。
現パロの長曾我部の息子たち。