期成(小説家信親×担当隆元)




実は、信親はあまり夏が得意ではない。
その根本的な原因は、暑さではなく光の強さにある。
夏特有の強烈な直射日光は、弱視の自分にとって目が潰れそうになる兵器そのものである。また、さまざまな店のエアコンの効きすぎは、引きこもりに拍車をかけるもの以外の何物でもなかった。

今日も気温は30度超え。
窓から、申し訳程度の温い風がそよいできて、信親はぴたりとペンを止めて、顔をあげた。
眼前の窓から見える風景は中々にいい。この風景を見ながら仕事がしたくて、このマンションを買ったぐらいだ。しかし、日陰とはいえ日差しが強くて瞳がピリピリする。
仕方がないので以前買った薄ピンク色のレンズをしたサングラスをかけてみたけれど、効果は薄く、やっぱり目が痛い。
信親は小さくため息をついた。

「あっついな〜・・・」

独り言は部屋に溶けて消えた。
今日はとても静かだ。
朝、隆元から、急遽出張に行かなければならなくなったという電話が来て以来、電話もなければ来客もない。
ふと、窓の隣に貼ってあるカレンダーが目に止まった。隆元が仕事部屋にとわざわざ買ってきたカレンダーである。色々な〆切が赤ペンで書いてあって空白が少ないことは純粋に嬉しい。

「仕事、今日は隆元に言われなくてもしっかりと捗ってるのにな〜。」

間延びした自分の声に返ってくる言葉がなく、小さな違和感を持つ。そんな自分自身に苦笑いしつつ、信親はコーヒーをすすった。

(割と、人間並になってきたってとこかな、俺も。)

突然電話が鳴った。
コーヒーのマグ片手に、受話器を取ってみる。
ディスプレイに表示してある番号は、電話機に登録していない携帯番号で、記憶の中を洗っても全く知らない番号だった。
以前ならば、完全無視の上電話線を取って仕事を続けていたが、以前よりは電話に出る癖がついていたのと、隆元なら何と応えるかと考えながら、信親は通話ボタンを押した。

「もしもし。」
“長曾我部信親か。”

突然の名指し、しかも呼び捨てだったが、信親はその部分は何とも思わなかった。それよりも、何の感情もないやや高圧的な口調が気にかかる。用心深く眉を潜めて口を開いた。

「そうですが。」
“我は毛利出版の毛利元就と申す。”
「はぁ。」

毛利。隆元の親戚だろうか。

“仕事の依頼がある。電話で申すより会って直接交渉したいのだが。”
「ああ、いいっすよ。何時っすか?」
“本日14時。S駅前のビル3階日本料理屋で待つ。”
「分かりました、じゃあ、あとで。」

受話器を置いて、信親は腕を組みながら窓の外を見た。
出版社の人間というのは本当のような気がした。だから仕事の依頼も変な話ではないだろう。しかし、どこか癖のある相手のような気がする。話に飲まれないように気を付けなくてはと思いながら、近くのメモ用紙に“駅前ビル3階、14時”と走り書いて、信親は再びペンを取って原稿用紙に向かった。




信親は家で仕事を続けた。
時計を見ていないから時間は分からない。だが、太陽は天頂からかなり傾いているのはわかった。
それでも信親は、何食わぬ顔でペンを走らせ続けている。

一応、外に出てはみたのだ。だが日差しが強い。ピンク色のサングラスでは心許ないので、真っ黒なサングラスをかけたのに、それでも目が痛い。
それに暑いし。思えば14時なんて、丁度一番暑い頃じゃないか。
信親は3歩と歩くことなく、何も言わずにそのまま家に引き返してしまった。
本当に書いてほしいなら、あちらからくるだろうさ・・・
信親はすっぱりと駅へ行くことを諦めて、再び家の中に戻ったのである。

そうしてしばらくすると、電話が来るのは当然のことである。信親は時計を見ず、電話も無視してペンを走らせていた。
業者の大概はここで諦める。
今現在契約している出版社の連中は、皆家に押し掛けてきている。そうなると一気に応対がめんどくさくなって、執筆の契約を了承したというのが大体の経緯。
もし、今回の相手も本気ならそれくらいはするだろうと勝手に思っていた。

しばらくすると、玄関のチャイムが鳴った。

「はい。」
“毛利だ。貴様が来ぬ故、参った。”
「・・・はぁ。じゃあ、今開けますよ。」

相手は本気だったようだ。
ああ、隆元がいてくれたなら。
来られては仕方がないと、信親は共同玄関のロックを解除した。








「はぁ・・・。」

隆元は見知らぬ道を歩きながら、小さくため息をついた。

この出張に、納得いっていないのは隆元自身だ。
会社のやりかたに問題があることは、今に始まったことではない。
それでも今まで何も言わずに従っていたのは、行く当てのない自分を拾ってくれた社長に恩を返すためと、社会に貢献したいがためと、一社員が会社相手に物を言える雰囲気ではない空気が会社内にあるからだった。

それを差し引いても、今回の出張は余りにも酷すぎる。
営業の一人が突然長い病気療養を取ってしまった。それは仕方がないが、他の営業はその社員の抱えた仕事を分担しようともせずに1週間放置していて、とうとう執筆交渉に行く予定でアポを取っていた作家事務所から、怒りの電話がきてしまったのだ。
その作家というのは地方に住んでいて、主な活躍場所も地方中心。
この交渉を落としてしまうと、これからその地方に会社が進出できなくなる可能性だってある。
それなのに、皆保身に走り、相手から怒られるのが嫌で営業も企画も皆交渉に行きたがらなかった。社長は声すらかけてこない。そこで、隆元に鉢が廻ってきてしまったのだ。
その話を聞かされたのも、つい昨日のこと。
流石に頭にきたが、決まったことに怒っても仕方がない。会社内を走り回ってほぼ徹夜で資料を作り、一端家に帰って新しいスーツに着替え、隆元はそのまま飛行機に飛び乗った。

その甲斐あって、交渉はなんとか上手くいったが。
あまり嬉しくない。隆元だって、怒られるよりは褒められたり難なく事が運ぶほうが好きだ。ただ、人よりも少し耐えることができるぐらいで。
腹の音が見知らぬ土地に空しく響いて、時計を見たら昼を過ぎていた。

(そういえば、お腹が空いたな。)

つい最近食べたものといえば、朝方に帰りながら飲んだ栄養ドリンク。そして飛行機の中で食べた、受付の女の子から貰ったあめ玉1個。
流石に腹も減るか。
そして、このとんでもない暑さだ。
クールビズのスーツなんてものを着ているけれど、どこにそんな機能があるのかさっぱりわからないぐらい暑い。いっそ脱ぎ捨ててしまいたくなる。
そのうちこれは死んでしまうかもしれない。早く近くの店にでも入ってしまおうと辺りを見まわした。
が、悲しきかな、この周辺に建っているのはビルばかり。

(・・・絶対今日、私の星座の運勢は最下位に違いない・・・)

仕方なく、店を見つけるまで歩くことにした。
しばらく歩いていると、路肩に止まっているバイクと出くわした。
タイヤがパンクしたのだろうか、持ち主であろう男は、後ろのタイヤをのぞき込んでいる。
男が屈んでいた腰を伸ばした。その時に現れた奇抜な髪の色に、つい隆元は目を見張ってしまった。
透き通るような美しい銀髪。短いけれど風に靡くとキラキラと光って、この世にあんなに美しい色があるのかと思った。
ただ、その男の身なりはタンクトップ一枚だし、身長は大きいしで、極力関わりたくない。隆元は迂回するようにして、なんとか横切ったと胸をなで下ろした矢先。

「おう、そこのアンタ。」

後ろからしゃがれた声。
隆元は一瞬立ち止まったが、再びゆっくり足を運ぼうとすると。

「おい、アンタ、アンタって!聞いてんのかあ!?」

・・・。
乱暴な言葉遣いに、心の中で大きくため息をついた。
仕方なくゆっくりと振り向いてみると、バイクの持ち主の男がしっかりと隆元を見つめていた。
しかも一つ目ときた。隆元は心の中で頭を抱えた。
人を見た目で判断したくはないが、見知らぬ土地で暴力沙汰に巻き込まれては、流石に自分自身が不憫すぎる。隆元は男に一歩も近寄らないようにしながら応えた。

「あ・・・私でしょうか。」 「おうよ。あんた今急いでるかい?」
「・・・あの、この近くで昼食が取れる店を探しているんです。」

すると男はにっこりと笑った。何だか嫌な予感がする・・・。

「そんなら丁度いいや!とびっきり美味い店を教えてやっからよ、すぐそこの俺の店までコイツを押すの手伝ってくれねえか?俺のバイク、ちいっと壊れちまってさ。」
「はあ・・・。」

というわけで結局隆元は、見事男のバイクを押すのを手伝うことになってしまったのである。
男の言う“すぐそこ”という言葉だけに期待することにして、隆元は男の見えない所でがっくりと方を落とした。








炎天下のなか、しかも空腹のままバイクを押すこと30分。
男の店だという商店街の魚屋に着いた途端に、隆元は倒れこみ、店の奥にあった男の家にかつぎ込まれてしまった。

暫くして目が覚め、水を貰って海鮮丼を食べてなんとか回復したものの、まだ少し頭がくらくらする。飛行機に間に合う時間まで、休ませてもらえることになった。
海鮮丼の他に、美味いからと出されたウツボのたたきを一切れ食べてみる。あまりもの美味しさに目を丸くした隆元は、下手に店を探さなくてよかったとここで初めて思った。

また、この店の主である男は、見かけによらずとても気さくで、今は店先でバイク屋に電話をかけている。ちゃんと礼を言わなくては。
男が電話を終えて、居間に戻ってくると隆元の顔を覗き込んできた。

「う〜ん、さっきよか、顔色はよくなってきたな。よしよし。」
「あの、すみませんでした。お昼まで頂戴してしまって・・・これ、お店の魚でしたのなら、お金を払わなくては・・・」
「あ〜あ〜!いいってことよ。こっちも手伝ってもらったしな。それよりもっと食っていきな!」
「えっ・・・しかし・・・。」
「いい、いい!遠慮すんな兄ちゃん!」
「あ・・・ありがとうございます、え〜と・・・失礼しました。そういえば、お名前をお伺いしていませんでしたね。」
「あ?名前言ってなかったっけか?俺は元親。長曾我部、元親。この辺じゃあ時々いる名字なんだがな。世間的にみたら少し珍しい名前だよなぁ。」

長曾我部?
そういえば、先生も地方出身と聞いたような。
・・・ああ、何という偶然だろう。この方も、瞳が灰色だ。

「あの、もしかして、長曾我部信親先生をご存じですか?」

つい勢いで聞いてみると、元親は驚いて目を丸くしたが、しかしそれはやがて満面の笑みとなって、嬉しそうに弾丸のように言葉をまくしたて始めた。

「お前さん、信を知ってんのか!?あいつ、俺の息子だ!そうかあ、信も世間様に知られるようになったかぁ…あ!そうだ!ちっと待ってな!おい、和、和!!スクラップ持ってきな!」
「あ、ああ・・・あの・・・」
「うちの信親よぅ、一丁前に作家なんてモンになっちまって・・・っカー!でもやっぱ有名になってるって嬉しいもんだなあ!」

しばらくすると障子が開いて、信親によく似た風貌だが、少し暗めな雰囲気の青年が(そういえば兄弟がいると言っていたが、弟だろうか。)スクラップブックを無言で元親に差し出した。
それを受け取った元親は、隆元の隣に座ると、まるで何か宝物を開ける時のような愛しい目つきと手つきで、スクラップブックを広げてみせた。
中は全て信親、信親、信親。

「コレ最初の祝賀会の時な。俺らも呼ばれて行ったっけなあ・・・。あとコッチはあいつが一番最初に新聞に連載が決まった時のインタビューだ。かったるそうにしてやがるぜ。」
「あはは。」

指をさしながら話す元親は本当に嬉しそうで、隆元も顔が綻ぶ。そして、ほんの少し羨ましくなった。先生はどう思っているか分からないけれど、父からはこんなにも愛されているのだ。素敵な御父君ではないか。
・・・自分もこんなふうに父に自慢されたりする日が来るのだろうか。

「あの・・・すみません。実は・・・。」
「んあ?」
「私、先生と契約している出版社の者で、先生の担当をしているんです。」

元親はぴたりと止まった。
隆元をじっと見つめたまま。

「・・・か、和―!、盛―ッ!酒だ、酒持ってこい!んでテメエ等も一緒に飲め―!編集さんを囲んで酒盛りだー!」
「い、いや、私は今仕事中ですので!」
「何辛気臭ぇこと言ってやがる!付き合いな!」

すると、一升瓶を抱えた銀髪のやや幼い風貌の青年と、先ほどの少し暗い雰囲気の青年が刺身を持って現れた。

「アンタ、名前なんていうんだい?」
「え、あ、毛利です・・・。」
「へえ、毛利さんかい!・・・そういや、俺が大学ン時、毛利って先公がいたっけなあ・・・。いや、いっつも信が世話になってるなぁ。あ、コイツらは信の弟な。本当はもう一人いるんだが・・・ほら、挨拶しな。」

二人が同時にぺこりと頭を下げる。
すると、その二人が隆元の両脇に座り込み、暗いほうから猪口を渡され、銀髪のほうから猪口を渡された。
これはもしかしたら飲まされてしまうのではと、隆元は思ったが、気がついたときには、既に猪口には並々と酒が注がれていた。





隆元はわんこそばの如く次々と酒を飲まされ、ふらふらなまま飛行機に乗りこみ、やっとの思いで帰ってきた。
既に辺りは暗いが気温は高い。
空港を出て電車を待ちながら、そういえば今日は全く先生に会っていなければ、声さえ聞いていないことを思い出した。また、肩から信親の実家から渡してくれと頼まれたクーラーボックスがぶら下がっている。
自宅に帰る前に、先生の顔を見て帰ろうと隆元は信親の自宅へと向かった。


共同玄関のインターフォンを押す直前、酒臭くはないか少し考えたが、指は既にボタンを押していた。

“・・・はい。”

珍しく声のトーンが暗い。何かあったのだろうか。

「先生?隆元です。様子を見に来ました。」
“・・・はい。”
「先生?何かあったのですか?」
“・・・今開けます。”

すぐに開いた共同玄関を通り、エレベーターが上昇する時の胃が浮く感覚は酔った体には少々堪えたが、それでも何とか先生の部屋の前にたどり着いた。
ドアを少し押してみると難なく開いた。鍵をかけていないとは、また珍しい。
隆元は少し首をかしげたが、すぐに中に入り、信親を探そうとする。が。

「先生、隆元です。うわ。」

ドアを開くなり、玄関先で膝を抱えて蹲っているのは、果たして本当に小説を書いている人なのだろうか。どうみても腐った自宅警備員にしか見えないが、声をかけてみる。

「どうしました、先生。そんなところで。鍵をかけていないとは、珍しいですね。」
「取り立てみたいな執筆依頼が来ちゃったよ・・・。」
「えっ・・・それは、ちゃんとした会社だったのですか?話は伺いました?」

変な業者に引っかかったのではと心配する隆元に、信親がそろりと腕を伸ばした。その指先には、名刺がぴらりと1枚。荷物を玄関先に置いてから差し出された名刺を受け取った隆元は、名刺の名を見て絶句する。
だが、そんな隆元の様子に気づかず、信親は続ける。

「・・・多分ちゃんとした会社だけど…。とんとん拍子に原稿2000枚のハードカバーを3カ月で書くことが決定しました・・・。」
「・・・。」
「名刺をくれた人は居るだけで喋らなかった。一緒に来た若い男の人が、ずうっと話してたよ。」
「・・・。」
「内容は短編集でも物語でも、なんでも任せるって。あらすじが決まったら広報に知らせろって・・・・・・隆元?」

ずっと黙っている隆元を不思議に思った信親は、僅かに顔を上げた。
視線の先には、名刺を見ながら険しい顔をしている隆元。

「・・・隆元?」
「先生、隣の若い男とは、先生より少し髪が短いくらいで、私より髪の明るい男ではありませんでしたか?」
「そうだけど。」
(・・・元春か。)

隆元は信親に名刺を戻しながら、口を開いた。

「先生、この名刺の人は私の父です。それから、話をしていたのは私の弟です。」

名前を見ただけだというのにすっかり酔いが醒めてしまった。
力が抜けてその場にへなへなと座り込んでしまい、目の前の信親と目が合った。すると、日中に見た信親の父親の瞳の色と、髪の色と、目の前の瞳の色が同じだったからつい苦笑いを浮かべてしまった。
確かに、家を飛び出したとはいえ同じ仕事をしているのだし、ましてや親会社に勤務している身、こういうことは起こりうることではあったが・・・。

(まさか、こうにも早く・・・。)

信親は、力なく笑う隆元をきょとんと見つめた。
日中に来た男たちの姿勢は、目の前で項垂れている隆元の親族とは考えられないくらい強気だったが、そういえば若い男のほうは上目使いが隆元と似ていたかもしれない。
ああ、そういえば隆元も、自分相手にはあれくらい強気の姿勢を見せる時もあるな・・・。
たとえば掃除をする時とか。
締切が迫っている時とか。
そうか、あの感じは遺伝だったのか・・・。
信親は納得しながら、ぼんやりと頭の中で2000枚の構想を組み立てだした。

「父と弟が、面倒をかけました。」
「え・・・あぁ。殆ど話聞いてなかったから大丈夫だよ。」
「あはは、流石ですね。それでですね、先生。私は今日、先生の出身地に出張に行ってきたんですよ。それで・・・ハイ。」

今度は隆元が腕を伸ばす番。
腕に持っていたクーラーボックスは結構重量があって、信親のほうへ寄せるように渡した。
何だろう。出身地って?というか、クーラーボックスには見慣れた屋号のステッカーが貼ってある。
何の気なしに開けてみれば、一目でわかる程の新鮮な魚介類が入っていて、その一番上には父や弟たちが家で飲み会を行っているであろう写真が1枚乗っていた。
つい、その写真に手が伸びた。

(あ、珍しい。忠も映ってる。)
(そういえば盛って、もうすぐ受験だよなぁ。)
(和も具合どうなったかな・・・。)
(・・・・・・・・・・・・親父なぁ。)

そういえば、この間和が家の近況報告を電話でしてくれたけれど、実家には久しく帰っていないな。
というか、どうして隆元が持ってきたのだろう。

「ねえ、隆・・・。」

話しかけようとしたら、隆元は座り込んだまま眠っているではないか。
そういえばどこか酒臭い。・・・もしかして、父たちに酒を進められ、拒否できずにそのまま飲んでしまったのだろうか。
隆元ならあり得る。それに日々の疲れだってあるのだろう。

(なんだ、互いに互いの親に逢ってたのか・・・。あれが隆元の親かぁ。確かに、隆元の性格なら畏怖しちゃうかな。)

「そうとなれば、下手なものは出せないね。」


真夏の暑い日。
もうすぐ先祖も帰ってくるお盆も近い。いきなりひょっこり帰省してみるのもありだろう。
その前に、隆元が起きたら実家はどうであったか聞いてみよう。
信親は玄関先で眠っている隆元を抱きかかえ、仕事場へ引っ込んでいった。


“あいつ、ここ数年帰ってきてねえからよ・・・。仕事ぶりはみてるし、元気にしていることは判るけど・・・やっぱ・・・ちゃんと顔見てえなぁ・・・。”
“あはは、じゃあ今度、引きずって来ますよ。”
“そうかい、頼んだぜ。”





某I様からのリクエストでした。
互いの親に会う、小説家信親と、担当隆元でした。